世界シェア3位ながら、先行きを不安視されていた車載電池事業。次の一手を打ち出したが、戦略がもくろみ通り機能するかは不透明だ。
ようやく、次の一手を明確にした。
2月2日、パナソニックは決算会見の場で、開発中の新型円筒形車載電池「4680」の量産化に向けた試作ラインを和歌山の工場に構築すると明らかにした。検証後は日本で量産を開始し、その後アメリカなど海外での量産も視野に入れる。
世界的な脱炭素化の流れで、EV(電気自動車)向けの需要急増が見込まれる車載電池。中国や韓国メーカーらの投資合戦が白熱するのとは対照的に、世界シェア3位のパナソニックは、成長柱であるはずの車載電池事業の先行きを業界や市場関係者らに不安視されていた。
2021年後半、ヨーロッパでの工場建設を念頭にした市場調査を打ち切り、角形電池で合弁事業を組むトヨタ自動車による北米電池工場の建設にも直接参画しないなど、事業に後ろ向きと思わせる動きが相次いだためだ。懸念が渦巻く中、楠見雄規社長は東洋経済のインタビューに「諦めていない」と述べ、事業継続に対する意欲をにじませた(インタビューはこちら)。
なぜテキサスではなく和歌山か
4680は、現在量産している「2170」電池に比べ容量が5倍、出力は6倍になる。1回の充電による航続距離を伸ばせるほか、パック化せずに車体に直接組み込めるため、作業工程が減りコスト削減につながるとされる。
パナソニックで車載電池を手掛けるエナジー社の只信一生社長は「(4680の開発は)テスラの強い要望でやっている」と語る。最大顧客であるテスラは、4680を搭載したEVの生産を2022年の早い段階に始める見込みを示していた。
車載電池は重量や安全性の観点から、EV生産を行う工場がある現地での生産が好まれる。テスラはアメリカ・テキサス州の工場で4680を搭載したEVを生産するとみられ、パナソニック社内では「最初からテキサスでの量産に踏み切ろうという意見もあった」(エナジー社幹部)。
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