日本では、医療費の自己負担率は原則3割と定められている。しかし、子どもに対しては多くの自治体が助成を行い3割分を負担して、医療費を「タダ」にしている。選挙の際のアピール材料にもなるため、助成競争が際限なく行われてきた。子育て世帯にとってはありがたい政策だろうが、この「子ども医療費無料」は本当によい政策なのだろうか。
伝統的な経済学では、ゼロ価格(=無料)は、単なる価格低下の延長線上にあると考えられてきた。しかし、最近の行動経済学では、物やサービスの値段が、例えば105円から100円になるのと5円から0円になるのとでは、需要に与える影響が大きく異なると指摘されている。つまり、ゼロ価格はほかの価格と本質的に異なるということだ。これを「ゼロ価格効果」と呼ぶ。
なぜゼロ価格効果が重要なのだろうか。それは、もし医療サービスにゼロ価格効果が存在するならば、政府は無料と無料以外を戦略的に使い分けることで、社会厚生を向上させられるからだ。
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