禁止されるとしたくなる「リアクタンス」の経済学 自由が脅かされることへの反発

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「鶴の恩返し」といえば、日本人なら誰でも知っている昔話である。この物語のクライマックスは老夫婦が約束を破り部屋をのぞいてしまうシーンだろう。ある行為をしてはいけないと言われると、かえってしたくなるのだ。

この心理現象は、心理学で「(心理的)リアクタンス理論」により説明される。この理論をまとめた米カンザス大学のJ・W・ブレーム名誉教授(故人)によると、ある行動を取る自由が失われたりそのおそれがあったりするとき、人はそれを取り戻そうとする。自由を回復しようとする行動が、反発的な行動につながるというのだ。

リアクタンスは人間の選好や行動に影響を与えるため、経済学的にも重要だ。実際に企業の販売促進活動や価格付けなどへの応用の可能性も指摘されている。ここではまず、心理学で行われた実験からリアクタンスの性質について考えてみよう。

前述のブレーム教授は、4種類のレコードを評価する作業を被験者に行わせた。評価は2回行い、2回目の評価で高い点をつけたレコードをプレゼントするということをあらかじめ説明しておいた。一部の被験者には2回目の評価前に、「1種類のレコードは輸送トラブルで渡せない」と説明したところ、その被験者はなくなったレコードに2回目の評価で1回目より高い点数をつける傾向があった。

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