テクノロジーは人間の敵になりうるのか? この問いは、19世紀初頭のラッダイト運動(英国での機械打ち壊し運動)以降、社会科学において、いや人類にとって、最大の関心事の1つであり続けてきた。ここ数年では、“AI(人工知能)”という単語が広まり、「20XX年までに現在ある仕事のY%が奪われる!」などという言説があふれている。むろんそれらの考察ではAI自体の定義もバラバラであるうえ、人間の仕事がそのAIとやらにどれほど取って代わられるかなど、実証的に何か信頼できる数字があるわけではなく、主観的予想の域を出ない。一方、テクノロジーが人間の仕事にどのような影響を与え、実体経済にどのような結果をもたらしたかという点は、経済学の研究蓄積である程度が解明されている。
本稿では、技術的失業と技術革新に伴う労働市場の構造変化を解説し、現代社会への示唆を試みる。
「技術的失業」という用語自体は、約100年前に英国の経済学者ケインズが生み出したものである。「技術革新により人間の仕事が代替され、短期的には失業者が生まれる」という意味である。誤解されがちであるが同時に彼は、「人類は時間が経てば新たな技術に適応するであろうから、失業問題も長期的には解決されるだろう」とも述べている。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら