小杉湯 番頭 兼 イラストレーター 塩谷歩波氏に聞く 『銭湯図解』を書いた

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老舗銭湯24軒をイラストとエッセーで紹介した本が人気を集めている。脱衣所や浴室の造り、お湯の色に鏡の形、お風呂いすのサイズ、それぞれ違って実に細やか。空間全体からタイル幅まで建築図法を用いて実測しながら、柔らかな線と色彩で再現した。ページをめくるうちに、湯船につかる心地よさがジンワリ染みてくる。おけを床に置いたときの“コーン”という残響まで聞こえてきそうな、銭湯愛に満ちた1冊。

銭湯図解
銭湯図解(塩谷歩波 著/中央公論新社/1500円+税/123ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

縮こまって泣くのもいい、そんな魅力も伝えたい

──銭湯にハマったきっかけは、前職の設計事務所で頑張りすぎて疲れてしまったこと、だったとか。

私自身がのめり込みやすい性格で、時間を気にせず目いっぱい仕事をし、夜中に自転車で帰っていました。自分の生活をおろそかにしてたんです。それで体調を崩しちゃった。会社はだいぶ気遣ってくれましたが、医師の診断で3カ月休職することに。その間に友人と一緒に銭湯に行ったのが、本格的な出合いでした。

学生時代にも泊まり込み作業のときなど、家風呂代わりに銭湯に行ってはいたんですが、このときの見え方は、全然違ってた。精神的に追い込まれ、体が硬直してカチカチになっていたのが、昼間の銭湯ですっかり癒やされ、肩の力が抜けた。たまたま来ていたおばさんとたわいない話をするのも、とてもすてきな時間でした。あつ湯と水風呂に交互に入る交互浴という入浴法があるんですが、それが私に合っていたみたいで、通えば通うほど体調がよくなった。お医者さんにも、体を温めるのはいいから、と勧められました。

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