「アベノミクスの成功」という願望が統計不正を招いた。国会審議での徹底追及が必要だ。
通常国会の論戦が始まったが、冒頭から統計不正問題で政府は批判の矢面に立たされている。事は近代国家にとって屋台骨に関わる危険信号である。この問題には、十数年の時間幅で日本をむしばんできた病理と、安倍晋三政権の経済政策が成功しているという演出に関わる部分の2面があると思える。
毎月勤労統計調査のうち本来悉皆調査を行うべき大規模事業所についてサンプリングでお茶を濁すという悪習が、東京では2004年以降続いてきたことが明らかとなった。過去20年ほどの間の経費削減圧力の中、統計行政の現場は悉皆調査に代えてサンプル調査にして経費を浮かせるという悪知恵を働かせたのではないか。
これは厚生労働省に特有の病理ではない。JR北海道は赤字経営の中、保線の経費を維持できず、現場の保線担当者は偽の検査数値を挙げて、老朽化した線路を放置していた。検査や統計という仕事は、それ自体派手な成果を上げる事業ではなく、現場担当者の良心に依存している。また、組織に資源がなくなれば、真っ先に削減の対象となる。しかし、データを捏造してごまかしを続ければ、JR北海道のように大きな脱線事故を起こす。国の経済にとってもこれはひとごとではない。
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