政府統計の不正調査問題で揺れる安倍晋三政権。だが、真の問題はマクロ経済政策においてデータを無視し続けていることだ。
毎月勤労統計での不正調査が発覚し、野党は賃金の伸びを高く見せる「アベノミクス偽装」「消えた給付金」などと与党への批判を強めている。しかし、安倍晋三政権の問題はむしろマクロ経済統計の「軽視」にあるだろう。
2017年に統計改革推進会議が設置され、「エビデンス(証拠)に基づく政策立案」(EBPM)の推進が掲げられた。だが、安倍政権のマクロ経済政策は、統計データの分析に基づいて議論がなされ、全体図が決められる、というものではなく、むしろそれに逆行してきたといえる。
1990年代後半の行政改革、01年の省庁再編を経て、予算編成は大蔵省主導から官邸主導となり、首相が出席する経済財政諮問会議で決めていく手法へ変革された。その意義はあるが、安倍政権でトップダウンの政策決定が続くと、議論も首相の意向を忖度(そんたく)するものに変わっていった。
「中長期の経済財政に関する試算」は前提の甘さに加えて、財政再建の度合いを見る指標の安易な変更も行われ、信頼を失った。「経済財政白書」が政権の政策を宣伝するような内容になったことへの批判も多い。
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