今夏、政府は公的年金の財政検証を公表する。それに合わせて大手メディアの年金報道が増えてきたが、その中身は玉石混淆だ。
今年は5年に1度の公的年金の財政検証の年だ。政府は将来の年金給付水準見通しと制度改革の方向性を今夏、公表する。
こうした年は年金改革論議に火がつきやすい。かつて世論をあおった年金破綻論はさすがに勢いを欠くが、現在、その変形バージョンとして根強いのが年金の支給開始年齢引き上げ論だ。
最近でも「支給開始年齢を65歳から一律に引き上げなければ『長い老後』が制度の重荷となる」(2019年1月11日付日本経済新聞)、「支給開始年齢をさらに引き上げることについて議論を深めていくべき」(18年5月、財政制度等審議会)といった論調が多い。
こうした主張が今後、年金改革論議の主流になることは危うい。なぜなら支給開始年齢引き上げ論は旧来型の年金制度に沿ったもので、現在の年金制度では逆効果になるものだからだ。
現行制度の正しい理解
04年の制度改正により、日本の公的年金は事実上の「確定拠出年金」となった。旧来は確定給付で、将来受け取る給付水準を政府が保証(確定)していた。そのため、少子高齢化で高齢世代と現役世代のバランスが悪化すると、負担を増やすか、給付の約束を反故にしなければ年金財政が破綻する、と大騒ぎになった。
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