昨年の夏、茨城県つくば市にある(国立研究開発法人)物質・材料研究機構(NIMS)の構造材料研究拠点長、木村一弘さんから「火力発電所で使われている鋼材でたいへんなことがわかった」との知らせを受けた。「学会発表までは部外秘」とくぎを刺されたが、今回その一端を聞くことができた。
火力発電は日本の発電電力量1兆560億キロワット時のうち80.7%を占める(2017年)。その火力発電プラントには過酷な高温・高圧に耐える鋼材が採用されているが、木村さんによれば、「古い時代の鋼よりも新しい鋼のほうが強度が低い」というのだ。腰を抜かすような指摘だった。
NIMSには鋼材の経年変化を調べるための世界最大規模のクリープ試験装置があるが、「問題」はこの試験装置があったからこそ判明した。火力発電所が抱える「不都合な真実」とは?
山根:いつ見てもこのクリープ試験装置には「ひぇー!」です。
木村:ここにあるクリープ試験装置は500台。高温下の鋼の丸棒に2.5トンの重りを下げて引っ張り力をかけ続けています。
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