2018年夏、福島県広野工業団地内の一角に、高さ18メートルの巨大な鋼鉄製煙突が出現、巨大クレーンで吊り下げられた不思議な装置が煙突の上部にかみつくような作業が始まった。
ここは、福島第一原子力発電所(以下、イチエフ)から南に約30キロメートルの双葉郡広野町にあるエイブル(佐藤順英社長、社員数約200人)の拠点。同社は1991年にイチエフに近い双葉郡富岡町で創業、発電所のプラント建設やメンテナンス工事を担ってきたが、原発事故で本社が立ち入り禁止区域となったため、本社機能と研究拠点をここに移している。
進行中の作業は、イチエフの1、2号機の共用排気筒の撤去工事の模擬試験。原子炉本体の爆発を回避するため苦渋の決断として行われた1、2号機の「ベント」。高濃度放射性物質を含む高圧蒸気がその排気筒から放出され、多くの人々を苦しめてきたが、排気筒自体も汚染が予想され、その撤去は廃炉へ向けての大きな課題なのだ。その模擬試験中のエイブルを訪ね、プロジェクトを率いるエンジニア、岡井勇さん(取締役工事本部第一工事部長)に話を聞いた。
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