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コストを抑えて大型化、H3ロケットで世界と競う JAXA、新宇宙時代に挑む

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2019年2月26日、秋田県の三菱重工業田代試験場で行われ成功したLE-9エンジンの37. 8秒の燃焼試験。田代試験場では実際の打ち上げと同様に、エンジンを2基あるいは3基設置した状態での実験が可能(提供:JAXA)
日本の新型ロケットH3の開発が佳境に入っている。宇宙利用の需要はかつてないほど大きくなっており、今世紀半ばを待たず宇宙ビジネス市場は2.7兆ドル(約300兆円)に達するとの予測すら出ている。この新宇宙時代に対応するため、日本は新しいロケットH3とそのメインエンジンであるLE-9の開発を進めているが、その詳細はほとんど知られていない。そこで、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の筑波宇宙センターで、宇宙輸送技術部門・H3プロジェクトチームのプロジェクトマネージャ、岡田匡史(まさし)さん、同ファンクションマネージャ、黒須明英さん、同主任研究開発員、久保田勲さんにその取り組みをじっくり聞いた。
右・プロジェクトマネージャ、岡田匡史さん。1962年生まれ、東京大学工学部卒。中・ファンクションマネージャ、黒須明英さん。74年生まれ、東北大学工学部卒。左・主任研究開発員、久保田勲さん。74年生まれ、東京都立航空工業高等専門学校卒(撮影:山根事務所)

山根 現在のJAXAの主力ロケットであるH-2Aの試験機1号機が打ち上げられた2001年8月29日は忘れられない日ですが、あれからもう18年になるんですね。

岡田 H-2Aの打ち上げ実績は40機。増強型のH-2Bロケットも含めると打ち上げの成功率は97.9%、そのエンジンLE-7Aの成功率は100%で、いずれも世界トップの水準です。

山根 最近は打ち上げ時にハラハラしなくなりました(笑)。それほどの超優等生なのに、なぜ新型ロケットが必要なんですか。

岡田 基幹ロケットは国の重要なインフラです。それを自国技術で製造する「自立性の確保」と、政府衛星の打ち上げ能力を持つことは極めて重要です。一方、宇宙利用のニーズが増大し、ロケット打ち上げビジネスは熱い競争時代に入っています。日本が世界でイニシアチブを手にするためには、顧客ニーズに柔軟に対応できるロケットのシステム、高い信頼性、そして低価格が必須です。その国際競争力の実現には民間力が欠かせません。そこでH3ロケットは、JAXAがイニシアチブを持ちながら、プライムコントラクタの三菱重工業と契約し、民間がH3ロケットのビジネスを存分に広げられる開発体制としたことも、これまでと大きく異なる点です。

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