制度改革だけでは足りず作動学から安倍政権評す
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
森友・加計問題や日報隠蔽、裁量労働制データ改ざんなどの発覚は、官僚組織内でのサボタージュやリークの存在をうかがわせる出来事だ。近年まれに見る長期政権下で、官僚の不祥事が続くのはなぜか。
現在もさまざまな行政制度改革案が作られている。ただ、理論的に最適な制度にしたとしても、うまく「作動」する保証はない。本書は、気鋭の行政学者が制度の運営に焦点を当て、統治機構改革のあり方を論じたものだ。工学的発想の「作動学」を提唱する。
大日本帝国憲法や日本国憲法が導入された際も、「政と官」の関係がスムーズに回り始めるまでには相当な時間を要した。1990年代の規制改革や省庁再編は、日常的な行政活動を急変させたわけではなかったため、比較的円滑に移行できた。が、公務員制度改革は官僚行動に刷新を求める案件で、作動させるための戦略が本来は必要だった。第2次安倍内閣以降、内閣人事局を通じた幹部人事の統制で官僚制に官邸が過剰介入し、行政崩壊を招いたという。
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