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むらの・まさやす●三菱総合研究所社会ICT事業本部サイバーセキュリティ戦略グループ主席研究員。情報処理推進機構、経済産業省への出向経験あり。
つちや・もとひろ●慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。専門は国際関係論、情報社会論。著書に『サイバーセキュリティと国際政治』など。
サイバー空間の攻防激化 日本は安全対策で後手
評者 北海道大学大学院教授 橋本 努
トランプ大統領は去る9月、中国からの輸入品2000億ドル相当に対して、10%の関税を上乗せすると発表した。サイバー空間における中国のスパイ活動や知的財産権侵害への報復、というのがその理由である。すでに2013年の報告書では、米国の被害額は年間3380億ドルに上ると指摘されていた。
サイバー空間の攻防は、国家間の経済摩擦の種である。背後にはネット覇者の変容がある。いまやインターネットの国別利用者数では中国が米国をはるかに上回り、ネットで使用される言語も英語と中国語がほぼ互角の状態だ。1990年代までは米国の一極支配。ところが、現在では米国、欧州、中国の多極的支配へと変化している。
台頭する中国は最近、国内のコミュニケーションと金融をオンライン化することで、中央政府による監視と制御を強めてきた。「デジタル・レーニン主義」とも呼ばれるその手法は、じつは国際秩序形成力としても有効である。たとえばタンザニア政府は、中国の支援のもとでサイバー空間の管理手法を導入、その見返りに中国は8000万ドルの投資を行うことにしたという。中国流のサイバー空間がアフリカを含めた途上国に拡大すれば、中国はこの分野での国際的な主導権を握ることになるかもしれない。
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