『Black Box』を書いた伊藤詩織氏に聞く 性暴力をタブー視しない社会に

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2015年、著者は米国での就業について相談していた元TBSワシントン支局長山口敬之氏から準強姦(ごうかん)の被害を受けた、と訴え出た。東京地検の不起訴判定に対し検察審議会に不服を申し立てたが、一切の説明なしに「不起訴相当」と退けられる。密室内での事件、そして逮捕寸前に警察上層部から飛んだ逮捕中止指令。幾重にも重なるブラックボックスの中で、著者が今訴えたいこと。

Black Box
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──被害後、警察へ直行されませんでしたが、そんな冷静な判断をできる状態では到底なかった?

ではなかったですね。早朝、下腹部に裂けるような痛みを感じ、意識を取り戻しました。いったい何が起きたのか。現場のホテルへどう行ったか記憶がなく、状況を理解するのに時間がかかって、すごく混乱してしまった。自分の気を落ち着かせたい、安全な場所に行きたい、とにかく体を洗いたいと真っ先に思った。信頼していた相手が自分に対して犯した、まさに犯罪なんだとすぐに認識できませんでした。そして、まずどうすべきかの知識も自分になかった。まして事件から時間が経つにつれ警察への届け出で不利になっていくことなど思いも及ばなかった。一緒に食事をしている最中に記憶がプッツリ途絶えてしまったのが何によるものなのかも、1、2日経ってやっと、米国でよく耳にしたデートレイプドラッグ混入の可能性を考えられるようになった。

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