2党制の定着を困難にする首長の権限強化
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
1990年代の選挙制度改革で構想されたのは、2大政党制の実現だった。民主党政権誕生で実現されたかに見えたが、わずか3年で政権は瓦解。今回の総選挙では、流れを汲む民進党が大分裂し、2大政党制の実現が遠のいたと考える人も少なくない。民主党政権の失敗はガバナンスの欠如によるというのが定説だが、原因は本当にそれだけか。
本書は、気鋭の政治学者が2党制実現を阻むもう一つの要因を明らかにしたものだ。国政レベルでは選挙制度改革が進む一方、地方分権改革で知事や市長など首長の権限が強化されたことが、地方議会における野党の統合を阻害し、2党制定着を困難にしたという。国政に進出した首長政党に民進党がのみ込まれたのも、本書の仮説を裏付ける。
かつての中選挙区制の下での自民党。国会議員が地方議員を系列化し、補助事業などの誘導と引き換えに集票活動を行い、国会議員同士の競争を通じて、国政と地方政治の統合を可能としていた。しかし、小選挙区制導入で、自民党内の競争が消滅、補助事業の縮小もあって、国会議員と地方議員の関係は希薄化した。
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