
全世代型の制度への転換の必要性を説く
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
婚姻率と出生率の急低下が始まったのは、1970年代前半だ。ただ、その段階で現在予想されている急激な人口減少の到来が不可避となったわけではない。90年代後半以降の経済・社会の変化に、社会制度が対応できなかったことが、少子高齢化を助長した。
たとえば、企業は新興国企業との競争に対応すべく、コストの安い非正規雇用を大量に増やした。そのことは、教育訓練や生活保障の乏しい労働者の増大を意味したが、割を食ったのは団塊ジュニアだった。影響は、その後の結婚や出産にも及び、晩婚化や非婚化の一段の強まりで、第3次ベビーブームの到来が完全に抑え込まれたのだ。
本書は、元厚生官僚が、高齢者向けを中心とする現在の社会保障制度の限界と全世代型の制度への転換の必要性を説得的に論じたものだ。対象の拡大には慎重であるべきだが、家族形態や働き方が変われば、国が対応すべきリスクも変わる。子育てと就業の両立を国がサポートすることは、生産性向上とともに、少子化に歯止めをかけ、社会保障制度の持続性回復にもつながる。
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