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認知症薬の功罪 その飲み方は安全か

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増え続ける認知症患者。薬は効果が期待できる一方で副作用も深刻だ。投与量を増やしたことで症状が悪化する場合もあり、患者家族の正しい理解が重要だ。

(本誌:前田佳子)写真:高齢化で認知症患者は増え続けている。老老介護など家族の負担が増える中、画期的な治療薬はいまだ開発されていない

茨城県在住の本田美智子さん(仮名、85)がアルツハイマー型認知症と診断されたのは、4年前のことだった。大学病院の「物忘れ外来」にかかり、飲み薬か貼り薬を選ぶことになった。医師に違いを質問したところ、「車でいうと、トヨタ自動車か日産自動車かというぐらいで大差ない。効果は症状の進行を遅らせることにある」と説明された。飲み忘れを防げると思い、貼り薬の「リバスタッチパッチ」を選んだ。

最初は1日4.5ミリグラムの処方だった。だが2カ月後に18ミリグラムへ増量。すると感情の起伏が激しくなり、暴言や過食がひどくなった。医師からは「薬を増やすとシャープになる」と言われていたが、その変化は想像以上だった。近所の人からは、老人会の集金に何度も来るので困るというクレームが長男の妻の典子さんの元へ入った。車を運転すると塀にぶつけるなどのトラブルも増え、典子さんの携帯電話が頻繁に鳴るようになった。

1年後、家族は疲弊してしまった。困り果てて別の認知症クリニックを受診すると、認知症薬を減らすことを勧められた。18ミリグラムを13.5ミリグラムにすると症状は落ち着いた。だが2~3日に1度は発作的に怒る状況が続いたので、9ミリグラムまで減らした。そして2年ほど経ったある日、薬を貼り忘れた日があった。すると2~3日間、驚くほど調子がよかった。それ以降、貼り薬をやめてしまった。

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