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「イデノミクス」は対抗軸になるか 格差縮小のために定率負担、定額給付

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10分ほどの動画が与野党の国会議員の間で話題になっている。3月の民進党党大会で、井手英策慶応大教授が行ったスピーチだ。金融緩和などで経済成長を目指す安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスを「破綻している」と断じ、「分かち合いの経済政策」を訴えている。金融や財政、社会保障などアベノミクスへの具体的な対抗軸づくりは今後の作業だが、「イデノミクス」とも呼ばれる理念は、衆院解散・総選挙に向けた問題提起になることは間違いない。

井手理論の大きな特徴は、従来型の経済成長を実現するのは無理だという認識だ。スピーチでは「労働力人口、労働者の生産性、国内の設備投資のどれもが期待できない」と語っている。技術革新についても悲観的だ。「経済を成長させて、所得を増やして、貯蓄で安心を買う自己責任モデルがすでに破綻している」と強調。今の日本を「格差放置社会だ」と指摘している。

井手氏は、自宅のある神奈川県小田原市での体験も紹介する。「保護をなめんなよ」などとプリントされたジャンパーが約10年前に作られ、それを着用した市職員が生活保護受給者を訪ねていた。このジャンパーが批判を浴びて、経緯を検証する会議が市役所に設けられ、井手氏は座長に就任した。そこで、ケースワーカーが重労働に耐え、命懸けで仕事をしていたことを目の当たりにしたという。「彼らは孤立し、苦しみを訴えるチャンスすら与えられていなかった。彼らは加害者であると同時に犠牲者でもあった」と、井手氏は語っている。

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