キリン失われた10年､国内ビール軽視の代償 海外M&A1兆円の影で国内シェア急降下

海外M＆Aに10年で1兆円超を投じたがブラジルは撤退。国内も茨の道だ。

4月発売のノンアルコールビール「零ICHI（ゼロイチ）」は復活の起爆剤となるか

「圧倒的な成功体験が邪魔をして、競合対策が遅れてしまった」。キリンビールの布施孝之社長は、かつて8割を誇ったノンアルコールビールの国内シェアが、10年足らずで1割にまで落ち込んだ原因をそう分析する。

2月8日、同社はノンアルビールの新製品、「零ICHI（ゼロイチ）」を4月11日に発売すると公表した。主力ビール「一番搾り」と同じ製法を用いた、ビールに近い味わいをCMや店頭販促で大々的に訴求し、2020年にシェア3割までの回復を狙う。

発売1年でシェア急落

09年に発売した「キリンフリー」は、既存製品が微量のアルコールを含んでいたのに対し、競合他社に先駆けてアルコール0.00％を実現。年間の販売数量目標を2カ月ほどで達成するという大ヒットを記録したものの、翌年からサントリービールやアサヒビールが相次いで「オールフリー」や「ドライゼロ」といった競合品を投入すると、急速にシェアを落としていった。

キリンビール商品開発研究所の土屋義徳所長は「ノンアルへの広告・販促投資をしっかりしていれば、あれほど落ちなかったはず」と振り返る。