エッセー仕立てで悲観が過ぎると一喝
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
明治維新の頃、3200万人だった日本の人口は20世紀末に1億2000万人を超えたが、今世紀末には5000万人まで減少。わずかな期間で人口が半分以下に減るのは、有史以来、日本が初めてだ。先行きを心配する人も少なくない。
本書は、日本のマクロ経済学の泰斗が経済学の巨匠たちの思想をヒントに、日本経済と人口の関係について、エッセー仕立てでわかりやすく論じたもの。人口減少は放置が許される問題ではなく、政策対応が必要だが、日本経済への影響については悲観が過ぎると一喝する。
食料生産がボトルネックとなり人口は増えないとマルサスが論じたのは有名だが、その後、新大陸の開拓と産業革命で、人類はその呪縛から解放された。しかし、豊かになれば増えるはずの人口は、出生率低下で19世紀末の西欧では減少した。
ノーベル経済学賞を受賞したスウェーデンのミュルダールは、早くも戦前に人口減の悪影響と政府による子育て支援の必要性を説いていた。西欧の少子化対策は一朝一夕で作られたものではない。20年ほど前まで、人口増加への対応策ばかりが練られていた日本はすっかり出遅れた。真剣な対策が必要だ。
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