震度7を2回記録した熊本地震は、熊本県内を中心に深刻な被害をもたらした。安倍晋三政権は対応に追われているが、支援物資の配布に手間取るなど被災者には不満も募っている。加えて4月24日投開票の衆院補欠選挙では、京都3区で自民党が候補者を立てられずに不戦敗。北海道5区では野党の統一候補に肉薄された。
アベノミクスの成長戦略の柱であるTPP(環太平洋経済連携協定)の条約案と関連法案の承認、成立も先送りとなり、安倍政権は勢いを失ってきた。失速したまま参院選を迎えるのか、それとも反転するのか。政局の大きな節目である。
熊本地震が発生した翌日の4月15日、現地に入り取材に当たった。熊本市や益城町では家屋の倒壊が相次いだ。16日未明にはさらに強い地震があり、家屋の倒壊が広がった。
多くの被災者は当初、自宅が倒壊するのを恐れて駐車場や公園などに野宿した。政府首脳らが「早く屋内に避難させろ」と関係省庁や自治体に指示したが、自治体側は「野宿したのは余震を恐れて屋内に入れないためだ。実態を知らずに指示を出すのはやめてほしい」と反論した。政府は「食糧不足」という批判を警戒して、大量の食糧を提供するよう指示した。だが現場では食糧を分配する人員が不足し、被災者に届かない。衆院補選や夏の参院選を意識した政権は、世論の批判を恐れて矢継ぎ早に行動に出たが、必ずしも地元のニーズに沿っていなかった。
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