今も続く水産業の苦境 汚染水問題で販路失う
原発からの汚染水によって、生業の再建を阻まれ、被害の立証も難しい。
黒潮と親潮がぶつかり合う、世界有数の漁場、三陸沖。宮城県牡鹿半島の高台からホヤの養殖棚を眺める、石巻市の水産会社会長、佐藤秋義さん(67)の表情がみるみる険しくなった。
「2年半にわたってホヤの出荷ができないことで被った損害は2億円以上。今年も同じ状況が続くようだと、倒産に追い込まれかねない」
漁港や漁船の復旧が進み、ワカメの収穫でにぎわう浜にあって、佐藤さんは独り東京電力・福島第一原子力発電所事故の被害に頭を抱える。
タンクや地下貯水槽からの相次ぐ漏洩で汚染水問題が深刻化していた2013年9月9日、韓国は福島県や宮城県を含む東日本8県のすべての水産物を対象に、輸入禁止措置を発動。東北地方どころか全国でも随一の規模でホヤ養殖を展開していた佐藤さんは販路を失ってしまった。
それから2年半が経過した現在も、輸入禁止措置は解除される兆しがない。日本政府は事態を打開すべく、韓国を相手に世界貿易機関(WTO)のパネル(紛争解決小委員会)に解決を委ねたが、長期化は避けられない見通しだ。
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