経済の活性化に、むしろつながる格差是正
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
グローバル化や技術革新の結果、所得格差が多少広がるのは、やむなしと考える経済学者が少なくない。提言の多くも、教育訓練での人的資本の向上といった比較的温和なものだ。公平性を重視し、再分配を強化すると、効率性を損ない成長が抑制されると判断するためだ。しかし、できることは本当に限られるのか。昨年、ピケティ氏の『21世紀の資本』が日本で話題をさらった。本書は、ピケティ氏の師匠筋にあたる分配問題の世界的権威による政策提言だ。内容も平易で説得力がある。
サッチャー政権で、所得税の最高税率は83%から40%まで引き下げられ、現在は45%である。本書は65%へ引き上げたうえで、それを財源に児童手当を中心とした家族手当の拡充を提案する。このほか、最低賃金による公的な雇用保証、成人した段階での若者への資本給付、労働組合の交渉力の強化、累進的な固定資産税の導入など15のラディカルな提案で、英国の格差を欧州大陸並みに改善することを目指す。
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