村上世彰氏への強制調査に関しては断片的な情報しか報道されておらず、現段階では一般的なことしか言えないが、相場操縦は違法か合法かの線引きが非常に難しい。大量の株式を売買すれば、それによって株価が変動するのは当たり前だ。株価の変動や関与率(当該株式の売買全体の中で特定の投資家の売買が占める率)だけを相場操縦の基準にすれば、大口の株取引のほとんどが該当してしまう。
とりわけ、経営者に具体的な提案をするために株式を買い集める世彰氏のようなアクティビストの場合、提案が受け入れられなければエグジット(退出)のために大量の株式を売却することになり、関与率は高くならざるをえない。それだけで「株価形成を支配した」として摘発されるとすれば、アクティビストの活動は困難となる。
相場操縦の成立要件について最高裁判例は「誘引目的説」を採り、投資者にその相場が自然の需給関係によって形成されているものであると誤認させて売買取引に誘い込む目的があるかどうかを判断基準にしているが、「誘引される可能性を認識していた」だけで目的があるとされるのでは、成立範囲を限定する意味はない。相場操縦としての摘発の対象は、ほかの投資者が誘引される現実的な可能性が売買注文の状況などによって客観的に裏付けられる場合に限定すべきであろう。
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