筆者が須田桃子氏の『捏造の科学者 STAP細胞事件』(文藝春秋)を非常に高く評価する理由は、須田氏がオフレコで入手した機微に触れる情報を、適切に読者に開示していることだ。
マスメディアでオフレコ情報という言葉はよく見るが、その内容が正確に理解されているとはいえない。筆者は外務官僚時代、新聞記者にオフレコ情報をずいぶん提供した。いわゆるリーク(秘密情報の漏洩)である。厳密に言えば、こういう行為は国家公務員法(その特別法である外務公務員法)や外務省内規などに違反する。
しかし、外務省だけでなく、役所はオフレコ情報なくして業務を遂行することはできない。オフレコ情報は通常、幹部職員が行う。筆者は中堅職員だったが、外務省幹部の指示に従って、「私がリスクを冒してあなただけに教えますよ」という形でリークを行った。理化学研究所(理研)は中央官庁ではないが、体質は似たところがある。それだから理研のオフレコ体質に関しても、役所の事例が参考になる。
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