キヤノン、松下、日亜化学…はびこる”偽装請負”の実態


 これに対して仲介の中心となった徳島県商工労働部の林善章次長は、「行政として協議の場を設けたのは確かだが、協議の内容に関して県がどうこうできるものではない。あくまで企業と労働者の問題」と突き放す。日亜化学も「この件についてはコメントできない」(広報担当)。妻と7歳の娘と暮らす島本さんは、現在、日亜化学の工場の草刈りや清掃を行う派遣社員として生計を立てている。

一気に派遣へと切り替え、直接雇用も期間工止まり

 実態は労働者派遣なのに業務請負を装う偽装請負は、管理者責任があいまいとなり、深刻な労災事故へとつながりやすい違法行為だ。04年の改正労働者派遣法の施行まで、工場の製造ラインへの人材派遣業務が禁止されていたこともあり、名だたるメーカーの全国各地の工場で当然のように行われていた。06年に社会問題化してからは、法違反行為の是正こそ進んだが、現場で働く労働者の環境は、実はまるで変わっていない。
 
 というのも、大半のメーカーが行ったのは、請負からすでに解禁されていた派遣への切り替えにすぎなかったためだ。07年3月には、派遣の期間制限も1年から3年へと延長された。直接雇用に切り替えるメーカーはあくまでも少数派。しかも期間工など有期雇用にとどまるケースが大半で、働く人たちの不安定な立場に変わりはない。
 
 トヨタ自動車系の部品会社であるジェコーは、07年秋、70人超の派遣労働者の直接雇用に踏み切った。長らく偽装請負状態で働かされてきた2人の女性が、埼玉労働局に申告したことがきっかけだ。
 
 彼女たちが期間工として働き始めて数カ月経過した07年12月、会社から「契約期間満了について」という書面を渡された。そこには契約更新の条件が列挙されていた。契約期間は1カ月短縮され3カ月、時給は変わらないが、これまで5万円出ていた契約満了報奨金がなくなった。賞与・退職金は従来からない。しかも更新可能者の割合は7割にとどまると明記された。期間工の一人は「働き続けるには一方的な不利益変更でものまざるをえないことになる」と憤る。期間工の正社員登用の道筋に関しても会社は無回答のままだ。

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