USEN・宇野康秀氏が独白 「なぜ私は辞めるのか」
時代の寵児が表舞台を去る。11月26日、有線放送最大手USENの宇野康秀社長(47)が退任、代表権のない会長に退いた。後任社長には外食チェーン、レックスホールディングス出身の中村史朗顧問(38)が就任。
USENは事業不振で業績が低迷。金融機関30行と組んだシンジケートローンの財務制限条項に抵触する状態が続いていた。業界では「金融機関からの退陣要請があった」ともうわさされる。だが宇野氏はあくまで自身の意思だと説明した。「1998年の就任から10年間を節目と考えていた。多くの人に迷惑をかけたので、事業整理が一段落した今、ケジメをつけたい」。
USENはこの1~2年、創業来最大の危機にあった。無料動画配信サービス「ギャオ」など新事業が不振にあえぐ中、2008年秋にリーマンショックが直撃。株評価損も重なり、総額1100億円超の最終赤字を計上した。
これを受け、09年4月にはギャオを売却。映画配給ギャガ、カラオケ、ネット接続、さらに宇野氏自らが創設した人材紹介会社インテリジェンスと、拡大してきた業容を再び縮小した。それでも今年年初に発表した09年9~11月期決算では、純資産わずか10億円、自己資本比率0・4%と、債務超過ギリギリまで追い詰められていたのである。
社運賭けた事業が失敗
09年11月にソネットエンタテインメントと提出した1枚のリリースは、当時の経営の逼迫状況を物語る。
「USENが提供しているISP事業を当社(ソネット)が譲り受けることに関し、誠実に協議する旨の合意をしました」。12月の契約締結に先立つこと1カ月、両社は「交渉中」という趣旨の、異例の発表をしたのだ。「二日後に株主総会を控えるUSEN側から、『契約前に事業譲渡の話を公表したい』との要請があった。いわゆる総会対策だ」(ソネット関係者)。