USEN・宇野康秀氏が独白 「なぜ私は辞めるのか」
宇野氏は「やや無理なM&Aをして手を広げすぎた。ギャオを始めた途端、競合する米ユーチューブが台頭するなど、いち早く始めたことも裏目に出た」と振り返る。
2000年代に入るとブロードバンド時代が到来。USENは05年に、既存の有線放送から、ネット上で動画を配信するメディアコンテンツカンパニー構想へと舵を切る。コンテンツ系企業買収も進めた。が、権利処理の手続きに時間を要したギャオを尻目に、著作権侵害をモノともしないユーチューブが一気に巨大化。USEN陣営は手も足も出なかった。
この12月には、有料動画配信「ユーネクスト」(旧ギャオネクスト)なども切り離す。「これで打ち止め」(宇野氏)となる最後の事業整理だ。自ら描いた大きな絵は結局、結実することなく、USENは祖業の有線放送が大半を占める、元の姿に戻る。
かつて東京・六本木ミッドタウンに6フロアを構えていた本社も、都内にある坪単価6分の1のビルに移転。年間十数億円もの賃料削減が見込まれ、身の丈経営を進める。
私財500億円を投入
切り離した赤字の2事業を背負うのは宇野氏個人だ。
「6月から譲渡先を探したが、黒字化せず、引き受け手を見つけられなかった。撤退も考えたが、可能性の大きなビジネスと信じており、個人で続けたい」。宇野氏は会社のために、個人で借金するなど、私財を投じた。保有していたインテリジェンス株を中心に、その総額は約500億円に及ぶ。