ウクライナ問題、学校や家庭で子どもの「なぜ」にどう答えるか 地球儀を見ながら学ぶ「13歳からの地政学」入門

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ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとして国際ニュースへの関心が高まっている。それも大人だけではない。学校や家庭では子どもたちが「なぜロシアとウクライナは仲が悪いのか」「なぜ戦争をしなければならないのか」といった疑問を大人たちにぶつけてくる。子どもの疑問に大人たちはどう答えればいいのだろうか。『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』(東洋経済新報社)の著者で国際政治記者の田中孝幸氏に、子どもが地政学を学ぶメリット、また学校や家庭で地政学を教えることはできるのか、話を伺った。

田中孝幸氏は、新聞社に勤める国際政治記者だ。大学時代にボスニア内戦を現地で研究した後、新聞記者として政治部、経済部、国際部、モスクワ特派員など20年以上のキャリアを積み、世界40カ国以上で政治経済から文化に至るまで取材をした経験を持つ。

国際政治の最前線で培われた深い知識とリアルな体験を重ねた田中氏が、13歳でも読める地政学の本を書くきっかけとなったのは、わが子との会話だった。

「長男と次男に自分が見てきた世界の話を聞かせているときに、普段の新聞用語を使って解説しても、なかなか理解してくれないことを痛感したんです。日頃ニュースを見ていても、国際問題について根本から理解できている人は大人でもそうはいません。そこでわかりやすい本はないかと書店に行ったのですが適当な本がなく、ならば自分で書いてみようと思ったのです」

国際政治記者として活躍する田中氏
(撮影:尾形文繁)

日頃から政治家や外交官を相手に国際政治の内幕を取材している田中氏が、今回本を書くに当たって工夫したのは、ストーリー仕立てにして登場人物の会話のやり取りから各国の特徴や関係性が見えるようにしたこと。難解な地政学の教科書や一般の解説書とは一線を画し、やさしい言葉で地政学の本質を学べるようにしたのだ。

「長く記者の仕事をしてきて思うのは、難しいことを簡単に言うのは非常に難しいということです。難しいことを難しく言うのは普通ですが、今は簡単なことを難しく言う人も少なくありません。地政学の入門書を読めば確かに知識は得られますが、それは表面的なものにすぎない。なぜ同じ人間なのに、生まれた国の違いによって考え方や行動様式が変わってしまうのか。私はその根底にある世界の仕組みを伝えたいと考えました」

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世界で戦争が起こる要因の多くは差別意識から生まれる

今、そんな田中氏が危惧しているのが、世の中に「ヘイト」が氾濫していることだ。

「野望や陰謀といった言葉を並べ、中国人が悪い、ロシア人が悪いと表現するのはもうやめたほうがいい。そうした言葉を子どもたちが真に受ければ、差別意識で凝り固まったような人間になってしまう。世界で戦争が起きるときの要因の多くは、この差別意識から生まれています」

トラブルが起こった要因をどこかの国や人のせいにするのは簡単だが、それでは次世代を担う子どもに対する責任を果たせない。世界は複雑で面白いものなのに、差別意識によって思考が停止してしまうという。そんなときに地政学が、世界を理解する手助けになるというわけだ。

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