自ら学ぶ力が育たぬ「教師が教える授業」を脱すべき本当の理由 漫画でわかる「デジタルの学び」進めるコツ
「“子どもたちが自ら気づき、学び取る授業”において、ICT端末は協働的に学び合うためのメディアとして、極めて効果的にその役割を果たすのです。教師の役割は、このような学びの中で、子どもたち一人ひとりの変化を捉え、フィードバックしていくこと。“教える人”ではなく、自律した学習者を育てる“ファシリテーター”として存在することが望まれています」

出所:『まんがで知るデジタルの学び ICT教育のベースにあるもの』
学校から保護者へ情報発信を、保護者も学ぶ姿勢が大切
情報の集積と共有、協働学習のしやすさなど、たくさんのよい点がある反面、間違った情報を信じたり、データを加工できるため真実と異なるものを作ってしまったりなどの“危うさ”も併せ持つICT。
GIGAスクール構想がスタートしICT端末を使い始めたものの、子どもたちが親に隠れて動画を見たり、友達にいたずらメールを送ったりするなどのトラブルが発生し、その対応に悩む学校も少なくない。
「端末の使い方に関しては、ここ数年間はこのような混乱は続くでしょう。ただ、『トラブルを起こしたから端末を使わせない』という発想のままでは、問題は何も解決しません」と、前田氏は言う。
「これまで日本の子どもたちにとって、タブレットやスマホなどのICT端末は、“学習の道具”という位置づけがされず、主にゲームやチャットを楽しむための“おもちゃ”でした。だからこそ、小学生のうちから可能な範囲で端末に触れ、『こういうふうに使うと役に立ったり喜ばれたりする』『こういうふうに使うと人に迷惑をかける』など、さまざまな経験を重ねながら “学習の道具”としての使い方を少しずつ身に付けていくことが必要です」
そのためには、学校から保護者へICT教育の授業実践など情報発信を行い、保護者も一緒にICT端末の使い方を学ぶ姿勢が大切だという。
「『ICT端末はオンライン授業(遠隔授業)のために導入された』と思っている保護者がいまだに多く、その本来の目的が正しく伝わっていないのが現状です。学校と保護者が歩み寄り、ICT教育で目指す未来の子どもの姿について共有し、望ましい端末の使い方を一緒に考えていくことが必要です。保護者はICTと向き合う子どもの姿を見守りながら、自身も社会人として学び直しをする感覚で、ICTを使ったこれからの生き方を考える機会にしてほしいと思います」
教師自身も「学び手」として成長していく
熊本市内の公立小・中学校に勤務後、熊本大学教育学部附属小学校で教鞭を執っていた1995年。かねて「ICTは子どもたちにとって興味深い存在になるはずだ」と思っていたという前田氏は、当時学校に備えられていなかったパソコンとデジタルカメラが整備される際に、その導入計画を行った。
「子どもたちとコンピューターグラフィックを学んだり、『きれいだな』と思ったものをデジタルカメラで撮影したり、コンピューターを使って合唱の練習をしたりしていました。このような活動に子どもたちが夢中になり学びを深めていく様子を見て、ICTを使うとこれまでとは異なる授業ができること、子どもたちが心から『面白い』と思うことは、結果的に子どもたちの技能や知識に結び付くことに気づきました」
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