グローバル・イノベーション 日本を変える3つの革命 藤井清孝著~ガバナンスの変化という「真の危機感」で変革
本書は、自身のグローバル企業での豊富なビジネス経験を踏まえ、グローバルな視点から日本の変革を論じた好著だ。著者にとっては、前著『グローバル・マインド』に続く2作目だが、前著が個人レベルでの変革が中心だったのに対し、本書は企業や国家レベルでの変革が中心だ。どちらも根底に日本の本来の強みを生かして「日本をなんとか復活させたい」という著者の熱い思いがあり、読者は大いに勇気づけられるだろう。
著者は、今日本が本当に変わるには、小手先の「自己変革」ではなく、ガバナンスの変化という「真の危機感」が生まれる仕組みをつくることが大切と強調する。そして本質的な変革のためには、日本独特の構造的な問題に対処する必要があり、それにはビジネスモデル、ガバナンス、リーダーシップの3つそれぞれで、イノベーションが不可欠と説く。
本書では、この3つのイノベーションを中心に本質的な議論が展開されている。中でもデジタル時代の「ビジネスモデル・イノベーション」の議論は印象的だ。グローバルなデジタル化の潮流の本質について論じたうえで、その潮流に乗って日本の強みを生かしながら、競争優位性を持続するにはどうすべきかが論じられる。目から鱗が落ちる内容だ。
電気自動車をビジネスモデル・イノベーションのケーススタディとし取り上げる。国家レベルの戦略の必要性など、鋭い分析や指摘がここでも随所に見られる。電池交換方式のユニークなビジネスモデル、日本でのタクシーの電気自動車化の取り組みなど、わかりやすく夢のあるメッセージも発信されている。自動車業界の将来を考えるうえで、拙劣な業界アナリストや自動車専門家による展望より、よほど参考になろう。
ふじい・きよたか
ベタープレイス・ジャパン代表取締役社長兼アジア・パシフィック代表。1957年生まれ。東京大学法学部卒業、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。米ハーバード大学でMBA取得。ファースト・ボストン投資銀行、ルイ・ヴィトン・ジャパンなどを経て、現職。
朝日新聞出版 1575円 192ページ
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