冬のライオン S・ユンガーほか著/尾沢和幸ほか訳
人は生死の分かれ目で何を考え、どう行動するか。事実のすごみがノンフィクションドキュメンタリーの神髄だ。本書に収録された10編はそれぞれ魅力的な主題と人物を配し、その醍醐味を満喫させてくれる。
たとえば、アフガニスタンでソ連やタリバン相手にゲリラ戦を戦い抜いたマスード将軍の、テロに倒れる直前の日々。犠牲者を出しながらもアフリカでエボラ出血熱と闘う医師たち。コンゴ北部でマウンテンゴリラを救うため、命を懸ける多数のボランティア。そこでは「人間の命よりもゴリラの命が大切にされるのは、どういうときか」と、根源的な疑問を抱かせる。
現代における冒険は、今や宇宙を除けば「探検の時代」が過ぎ去り、「共生、保護の時代」に様変わりした。この分野のノンフィクションも、おのずから変わらざるをえない。本書の元原稿を掲載した米『アドベンチャー』誌が休刊になったのも、そんな事情を反映している。
日経ナショナルジオグラフィック社 1890円
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