教員の負担軽減阻む「聖職者メンタリティー」の罠 内田良「働き方改革は『諦める挑戦』が必要」
若い人に限らず現場が声を上げていくことは大切です。例えば、教員免許更新制の廃止も、新たな学びの機会をつくるのはよいのですが、学んだことなどについて細かいチェックをするようなことはやめるべきだと私は思います。よりよい制度になるよう、教育界全体で声を上げていくことが重要ではないでしょうか。
また、2021年は「埼玉超勤訴訟」の判決も注目されました。埼玉県の公立小学校に教員として38年間勤めた男性が、残業代の支払いを求めた訴訟です。敗訴という厳しい結果でしたが、その方は控訴されたので引き続き応援していきたい。給特法の見直しはまだ可能性があると思うので、ここも声を上げていくべきところだと思います。
――22年の教育現場に期待したいことは何でしょうか。
この2年間、教育現場では、コロナ禍でやむをえず減らした業務がたくさんありました。その中でうまくいったものは新型コロナウイルスが収束した後も、続けてもよいのではと思います。
それは修学旅行の日数や行き先を減らす、部活の日数を減らすなどです。例えば部活が週3日になれば、限られた時間の中で効率よく練習を行う方法を考えるようになるなど、現場が変わると思います。コロナ禍の後に教育現場がうまく回る方法を、ぜひ考えてほしいです。
いくら美談があっても、その裏で何人もの教員が倒れ、去っているならば、その現場は健全とはいえません。そこに持続的な可能性はないと思います。
大切なことは教員も子どもたちも、みんなが元気に過ごすこと。「子どものために」と、今まで教員も教育委員会も私を含む教育学者もやるべきことを増やし続けてしまいました。でも、たとえ子どものためになることだとしても、それを諦めることも大切なのではないでしょうか。みんなが元気に笑顔で集える学校空間にするために、「諦める挑戦」を考えていただけたらと思います。

名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授。博士(教育学)。消費者庁消費者安全調査委員会専門委員
専門は教育社会学。教員の働き方、部活動、スポーツ事故や組み体操事故、2分の1成人式などの教育問題について研究している。著書に『ブラック部活動』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)、共著に『迷走する教員の働き方改革』『#教師のバトン とはなんだったのか』(ともに岩波ブックレット)など
(文:酒井明子、写真はすべて内田良氏提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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