開成・元校長の柳沢幸雄「優秀な子」に共通する、ある能力とは? 「勉強しなさい」の声がけ、代わりにしたいこと

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男女別学で、能力を伸ばす

――学校選びでは共学か、あるいは男子校か女子校かで悩む親も少なくありません。どちらも一長一短があるとは思いますが、中等教育という観点では、どちらのメリットのほうが大きいのでしょうか。

私は、中等教育の段階では男女別学が望ましいと考えています。ただ、誤解のないように言えば、大人の社会は男女平等で、共同参画であることが当然です。そこは強く意識しなければなりません。しかし、生物学的に言えば、男と女は異なります。その違いが顕著に出てくるのが、中等教育の時期なのです。人の成長を段階的に見れば、小学校では、男女はほとんど変わりません。その後中等教育の時期を経て、大学に入る頃に初めて成熟した男性と女性になるのです。

さらに、性に関しては、親も学校も教育することは難しい面があります。「朱に交われば赤くなる」という言葉がありますが、これはまさに中等教育の時期のことを言っています。それぞれの性を充実させていくには、意外と親や先生ではなく、同性同士、それも年長の同性同士の話が参考になったりもする。それには男女別であるほうが正しく伝わっていくと考えているのです。私たちも見よう見まねで覚えてきました。

――共学はその点が異なるということでしょうか。

共学では、男女ステレオタイプの役割分担をする場合が多い側面がありますね。例えば、野球部は男子生徒が多く、マネジャーは女子生徒の場合が多い。一方、ダンス部は女子生徒が多いといっても、男子生徒がマネジャーにつくことはあまり聞きません。すでにステレオタイプの役割分担が生まれているのです。

また、女子生徒に理系の才能があったとしても、ステレオタイプな思考によって文系に移ってしまう場合もある。そこには無意識のジェンダーバイアスがあるのです。ちなみに東大の女子学生比率が、なかなか20%を超えないのは、東大女子だと男性に敬遠されるかもしれないという無意識のジェンダーバイアスがあるからではないかと考えています。そうしたジェンダーバイアスを最小限にするためにも、異性の目を気にすることなく、自分の能力を伸ばす環境は利点が多いのではないでしょうか。今、私立校で共学が増えているのは、まったく経営上の問題だといえるでしょう。

グローバル社会で必要な「自己肯定感と自信」

――グローバルな時代といわれる中、これからの子どもたちに必要な能力とは何でしょうか。

まず、10年後には国際化という言葉は死語になるほど、その環境は常識となっているはずです。そのとき、グローバルで生きていくために子どもたちに必要な能力となるのは、「自己肯定感と自信」です。今現在、先進国の間で国際比較をしても、日本の子どもたちの自己肯定感と自信は非常に低いものとなっています。そこを日本の教育は考えなければいけません。

では、子どもに自己肯定感と自信をつけさせるためにはどうすればいいのか。それは「駄目と言わない教育」を行うことです。否定しない教育と言ってもいい。こう言うと、それでは子どものやりたい放題になってしまう、と批判する方もいるかと思いますが、それは単に周囲の大人の力量が足らないのです。大事なことは、子どもが何かをやったとき、否定から入るのではなく、肯定から入って「これはいいね」「もうちょっと工夫すればもっと面白くなるかも」というように“ちょい足し”ができるかどうかなのです。ちょい足し部分で、どんなことを足すのか。そこから、子どもはその大人が持つ価値観を知り、見習うようになるのです。

――日本人は、褒めるのが下手かもしれません。

そうですね、こう話すと子どもに褒めるところなんてない、という方もいらっしゃるかと思います。その場合は、その子どもの3カ月前と今を比較してみてください。子どもはつねに成長していますから、必ずなにかの変化があるはずです。例えば、靴のひもを結べるようになることでも、大きな変化です。私はこれを「垂直比較」と呼んでいます。親は子どもがどんな状態であれ、とにかく褒めてあげる。そのとき、どう褒めるかで、子どもに親の価値観を伝えることにもなる。さらに、子どもは生き残るために親の保護が必要なことを本能的にわかっているので、親の機嫌がよくなって、褒めてくれることは、大なり小なり、やってしまう、やれるようになるものです。

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