本物のエリート育成、N高に続き「N中等部」の狙い 角川ドワンゴ川上量生「脱偏差値」で受験と一線

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「N高にはプログラミングや投資などいろいろな分野で能力を発揮する優秀な生徒がいますが、社会からは『偏差値教育に落ちこぼれた人だよね。こういう道もあるよね』と見られてしまうこともあります。不登校=落ちこぼれではないし、逆に社会のエリートはこっちで、こちらこそが本道と言いたいんです」と川上氏は力を込める。

だからこそ、旧来の価値観でも結果を出せることを証明する必要があったというわけだ。そんな難関大学の合格者数を見て、「N高は生徒数が多いから」と揶揄する人もいる。それに対して川上氏は、「同じ偏差値の生徒が集まっている高校と異なり、N/S高の生徒は価値観も偏差値もバラバラ。そもそも進学を希望しない生徒もいる中での結果。こうしたさまざまな価値観を持つ人がいる環境で学んだ生徒こそ、国を動かすエリートになるべき」と話す。

近年、大学入試においても一律のペーパーテストを見直す動きがある。生徒が提出する書類や小論文、面接や実技などを通じて、「大学が求める人材像」に合った人物を選抜する総合型選抜を採用する大学が増えているのだ。この流れは私立だけでなく、国公立大学でも同様で、それに伴って総合型選抜に強い子を育てようという高校も増えている。

「N/S高は好きなことに時間を費やせるため、総合型選抜で提出するポートフォリオをじっくり作成することができます。そのため、総合型選抜に向いているといえるでしょう。総合型選抜は海外の入試方法に似ていることもあり、N高では日本の国公立大学の合格者数と海外大学の合格者数がほぼ同じです。しかし、だんだんと総合型選抜の競争が激しくなっています。N中等部とN/S高の6年間があれば、さらに自分の好きなことにじっくり取り組めるはず。すると、充実したポートフォリオが作成できますから、総合型選抜にも有利になると考えています」

今後も角川ドワンゴ学園では、競争のための学びではなく、いろいろな学びを生徒に示していくという。受験を勝ち抜いたエリートではない、社会に必要な本物のエリートを育てるということだろう。

現在、小・中学校における不登校の児童生徒数は19万6127人(文部科学省「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」)に上る。その一人ひとりの背景や思い、興味関心はそれぞれ異なるに違いない。学びの新たな選択肢として、N中等部への関心は今後も続きそうだ。

川上量生(かわかみ・のぶお)
角川ドワンゴ学園理事
京都大学工学部卒業後、コンピューターの知識を生かしてソフトウェアの専門商社に入社。1997年PC通信用の対戦ゲームシステムを開発する会社としてドワンゴを設立。2014年KADOKAWAと経営統合し、KADOKAWA・DWANGO(現カドカワ)代表取締役に就任。06年には子会社のニワンゴで「ニコニコ動画」を開始するなど、さまざまなサービスを生み出す。16年より現職

(文:吉田渓、写真:すべて角川ドワンゴ学園提供)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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