結局、世界的な株高がまだ続くこれだけの理由 日本固有の株価押し上げ要因も顕在化しそうだ

拡大
縮小

日本は、今後サービス業の回復と自動車生産の底入れが期待される。サービス業については緊急事態宣言の全面解除後、経済の回復を示すマクロデータは入手できていないが、11月以降にさらなる制限緩和が期待されており、経済の復調が予想される。子育て世帯への現金給付案に加え、ワクチン接種証明を活用した「Go Toキャンペーン」の再開やマイナンバーカード保持者に「3万円」のポイントを付与する案も伝わっており、これら政策効果が個人消費を押し上げそうだ。

需要者としてのサービス業が復調すれば、設備投資の再開などを通じて製造業の回復持続に資することにもなる。日本株の(欧米株に対する)相対劣後を正当化してきたサービス業PMIの格差は縮小に向かい、日本株上昇の原動力となりそうだ。

自動車生産の底打ち回復が全体株価の牽引役に

そして、ここへ来て明るさが増しているのは自動車生産の底打ちだ。自動車最大手のトヨタ自動車はコロナ感染状況の悪化により滞っていた東南アジアからの部品調達が正常化しつつあり、9月と10月の大幅減産分を取り戻す計画を示した。

11月に減産幅は縮小し、12月以降は挽回生産を検討するという。経済産業省の生産予測調査に基づけば、輸送用機械は9月に前月比マイナス8.7%の減産となった後、10月はプラス15.8%へと増産が計画されている。他の自動車メーカーも同様の状況にあるとするならば、12月に向けて生産は一段と回復する公算が大きい。

株式市場では輸送用機械のPER(株価収益率)が10倍前後まで低下するなど、追加減産リスクが嫌気されていただけに、こうした材料は一定の意味がありそうだ。当然のことながら自動車生産の回復に伴い鉄鋼、化学、非鉄金属といった関連業種の株価上昇も期待できる。現在、日経平均の12カ月先予想PERはほぼパンデミック発生前の水準へと回帰している。今後EPS(1株利益)成長率が1桁%後半の軌道を維持するなかで、株価はEPS成長率見合いで水準を切り上げていくと予想される。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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