「普通の子ども」にこそ、帝王学が有効な理由 リーダーシップを身に付ける「全人格的教育」
エリザベス女王が学んだ帝王学では、一人の英国人少女としての生活を体験させる一方で、国家君主として必須である法律や地理、歴史、算数といった学問、音楽や美術のような教養を学ばせた。まさに全人格的教育である。エリザベス女王は、学校には通わなかったが名門校イートン校の教授研究室へ通って法律、憲政史の教えを受けた。
エリザベス女王は、息子や孫にどんな教育を与えたか?
最強の帝王学を身に付けたともいえるエリザベス女王だが、息子や孫たちにはどのような帝王学を身に付けさせたのだろうか?
まず、エリザベス女王の長男であるチャールズ皇太子に関していうと、父であるフィリップ殿下の影響力が強かったようである。「息子にも自身の母校に通わせたい」というフィリップ殿下の考えで、チャールズ皇太子は、バークシャーにあるグラマースクールや、スコットランドにあるゴードンストウン校で学んだ。バークシャーは、エリザベス女王が週末を過ごすウィンザー城があることでも有名だ。チャールズ皇太子は、あえて中産階級の生徒と学ぶことを選択したために、階級社会の英国において、いじめの対象となったこともあった。その後ケンブリッジ大学への進学を経て、ウェールズ大学に入学し、海軍、空軍の軍務に就いている。
孫であるウィリアム王子は、ロンドン西部にある保育所や幼稚園に通い、小学校はバークシャーにあるルドグローブ小学校に通った。ルドグローブ小学校は全寮制の名門校だ。その後、「ザ・ナイン」と言われる名門パブリックスクールであるイートン校に入学。イートン校も全寮制であり、各界の著名人、上流階級の子弟が学ぶ。その後、ウィリアム王子は、セント・アンドリュース大学に進学、後に結婚するキャサリン妃と出会っている。大学卒業後、2006年にはサンドハースト王立陸軍士官学校に入学し、同校を卒業後は、陸軍少尉に任官。その後、08年には海軍兵学校および空軍士官学校でも教育を受け、海軍中尉、陸軍中尉の階級も保有している。

ヘンリー王子も、兄と同じく幼い頃はロンドン西部にある保育所や幼稚園に通い、小学校を卒業後イートン校で学んだ。卒業後はオーストラリアの牧場で勤務したり、レソトの孤児院で奉仕活動に従事するなど、市井の人々の生活を学ぶ機会を得た。05年にはサンドハースト王立陸軍士官学校に入学し、その後英国陸軍に入隊、近衛騎兵連隊に勤務した。ヘンリー王子にとって、英国陸軍への思いが強くあったことは、よく知られていることである。
チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヘンリー王子は、それぞれ既存の教育を受けてきており、エリザベス女王のように、宮廷家庭教師が人格形成を一任され、退任後も宮殿の一部に住み続けるような帝王学は受けていない。しかし、エリザベス女王が身に付けてきた、一般国民の生活に入ることで市井の人の暮らしぶりを知ることや、軍務に就くことで、軍務の側面から国を知るなど、国民に寄り添いながら帝王学を身に付けてきたことがわかる。