若者の投票率低迷は「主権者教育」でどう変わるか ドルトン東京学園「1票の重み」伝える授業の中身

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模擬選挙に加え、大畑氏が自身の授業で積極的に取り入れてきたのが、ディベートだ。「選択的夫婦別姓、安全保障関連法、消費税増税など、その時々で社会的に論争のあるテーマについて新聞記事などを用いて調べ、賛成派と反対派に分かれてディベートを行ってきました。授業準備においては、賛成派と反対派、両方の意見がバランスよく載っている資料を選ぶなど中立性を重視し、生徒の思考が偏らないよう注意しています」。

“知識詰め込み式”の政治教育が主流の中、大畑氏があえてこのような授業実践にこだわってきたのは、自身が高校時代に学んだ現代社会の授業の影響が大きいという。

「東京都立駒場高校に通っていたのですが、当時社会科担当だった小原孝久先生(都立駒場高校勤務後、都立国立高校に異動し10年退職)の授業スタイルが、まさに真の意味での主権者教育を体現するものだったのです。『高校時代は将来を見据える時期にあり、そのために社会を知る必要がある。社会科教育が果たすべき役割は大きい』というお考えの下、毎回授業の冒頭に、指名された生徒2人が気になる社会問題について3分間スピーチを行ったり、当時のリアルな政治をテーマにディベートを行って小論文を書いたりするなどの授業に非常に刺激を受けました。この授業をきっかけに社会科教員を目指すようになり、現在の授業スタイルに行き着きました。大学時代の教育実習も、母校である都立駒場高校で小原先生に指導していただきました」

学校の課題→地域の課題→国の政治課題→グローバル社会の課題

大畑氏が主権者教育を実践するうえで大切にしているのは、「3つのC」〜「Catchy=引きつけ、興味関心を抱かせること」「Casual=日常的な課題から、普段着の言葉で対話させること」「Cool=社会問題を語るのはかっこいいという価値観を根付かせること」だという。

「1つ目の『Catchy』の一例が、模擬選挙やディベートなどのアクティブラーニング型の授業です。2つ目の『Casual』では、授業において、まずは身近で日常的な課題から考えることで、政治という自分とは遠い世界に感じられる事柄を徐々に“自分事”として考えることができるようになるよう工夫しています。13年度から19年度の7年間、都立高島高校で現代社会と政治・経済を担当してきましたが、政治の授業では、年度初めは身近な『学校の課題』として校則や部活動、生徒総会のあり方などを考えました。続いて子どもの貧困、高齢者の孤独死など『地域の課題』、そして、憲法改正や原発再稼働など『国の政治課題』、最後にSDGsや核兵器禁止条約など『グローバル社会の課題』と、段階を踏んで授業を行い、生徒たちの興味関心を広げる取り組みを行っています。

3つ目の『Cool』では、学校外の人材や組織とコラボレーションして出前授業などを行い、魅力的なロールモデルと出会うことで生徒たちに『政治を知ったら面白い、かっこいい』と思ってもらえるようなプログラムを積極的に取り入れるようにしています」

主権者教育を実践するうえで大切にしている「3つのC」
Catchy=引きつけ、興味関心を抱かせること
Casual=日常的な課題から、普段着の言葉で対話させること
Cool=社会問題を語るのはかっこいいという価値観を根付かせること

高島高校在任時代、「地域の課題」として高島平の高齢化や団地の空き部屋の増加、外国人の住民増加によるマナーの問題などをテーマとして、フィールドワークやグループディスカッションを通して高島平を魅力的な街にするためにはどうすればよいかを考えた。区議会議員を授業に招き、生徒たちがその内容をプレゼンテーションした取り組みは新聞やテレビなどのメディアにも取り上げられた。

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