八戸市GIGA「授業とICT」ベストミックスの中身 先生も自治体も「困ったら声を上げて」が大事

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「機器の不具合などはGIGAスクールサポーターが対応していますが、『オンライン会議をやりたい』『授業研究会をオンラインでやりたい』といった相談はこちらで対応しています。また、ICT環境の整備や管理運用は学校の要である教頭先生の仕事ですから、教頭先生向けの研修も行っています。各学校では今もトライ・アンド・エラーで取り組んでおり、うまくいったことだけでなく、失敗したことも教頭先生経由で包み隠さずこちらに伝えてくださるので助かっています」

各校の校内研修では、昨年度は70回、今年度は50回の申し込みがあり、1校当たり2回は校内研修を行っている

そう話す石井氏は、大学時代に教育学部でプログラミングやICT活用を学んでいたという。しかし、現場経験とICT知識を持つ石井氏のようなキーパーソンがいない自治体は多いだろう。

だからこそ、「困っていたら声を上げることが大事」だという。

「ICT環境整備の担当者の方に伝えたいのは、『みんな困っていますよ』ということ。だからこそ、つながることが大切なのではないでしょうか。八戸市に隣接する三戸郡には指導主事がいない自治体もあります。また、ICT環境整備を担当するのは自治体の方なので、教育現場のことがわからないという話もお聞きします。そこで、八戸市と三戸郡で連携し、同じ機種を導入したほか、合同で勉強会を行ったり、私が近隣町村の研修を行ったりしています」

教員は八戸市と三戸郡の中で異動がある。そのため、三戸郡と八戸市を合わせた「三八地区」全域で同じ機種を導入し、同じ研修を受けられれば、どの学校に異動してもICT活用がしやすいというわけだ。

「子どもたちはもちろん、先生も、誰一人取り残すことなく、三八地区のみんながICTを使えるよう取り組んでいます」

さらに、八戸市内では、学校によっては端末の持ち帰りを行っているケースもある。しかし、家庭によってはネットワーク環境が整っていないため、貸し出し用のモバイルルーターを約1500台用意しているという。ちなみに、八戸市の各家庭のネットワーク整備率はGIGAスクール構想導入時の調査ではおよそ90%だったが、現在は98%まで上がっている。

「端末を文房具の1つとして使ってもらえるようになればと考えています。また、実際に各学校で端末を導入してみて、使い方などの課題も挙がってきていますので、今後は安全に使うための取り組みも強化していきたいですね」

子どもはもちろん、先生も、誰一人として取りこぼさない八戸市のGIGAスクール構想。成功のカギは、教員の不安やニーズを理解したキーパーソンによる、授業とICTのベストミックスを目指した取り組みにあった。明日からできるものを着実に、そして困ったことがあったら自治体の関係者はもちろん、先生も声を上げることが前進のキーワードではないだろうか。

※三戸郡は三戸町、五戸町、田子町、南部町、階上町、新郷村の五町一村で構成される。三戸郡と八戸市を合わせた7市町村は三八地方や三八地区と呼ばれている

(文:吉田渓、写真はすべて八戸市教育委員会提供)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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