目的が見えない「全国学力テスト」CBT化の行方 全体の学力レベル測定に全員調査は必要なのか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これに加えて、2013年、16年、21年度に経年変化分析調査、13年、17年、21年度に家庭状況と学力等との関係を分析するための保護者調査が補助的な調査として抽出方式で実施されてきた。

専門家会議では、それぞれ別個に行われていた経年変化分析調査と保護者調査の2つの抽出調査を1つにまとめ、悉皆調査との「二本柱」に整理することを提言。ワーキンググループは次回、24年度の経年変化分析調査からの順次導入を提言した。川口氏は「経年変化分析調査は、全体の学力の時系列的な変化を測る明確な目的があり、現行の調査の設計を踏襲すればいい。問題は本体の悉皆調査だ」と指摘する。

川口俊明(かわぐち・としあき)
福岡教育大学 准教授
大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了。博士(人間科学)。専門は教育学、教育社会学。文科省「全国的な学力調査に関する専門家会議」委員。2018年に日本テスト学会論文賞を受賞。著書に『全国学力テストはなぜ失敗したのか』(岩波書店)がある
(画像は本人提供)

悉皆調査の目的は、対象学年の児童生徒の全体的な学力を測って教育政策を検証するデータに使うという考え方や、受験した児童生徒の教育指導の改善に役立てるという考え方など「いくつもの目的があり、すべての目的を満たすようなテストの設計が困難」(川口氏)だからだ。

国際的な学力調査は、全体の学力を測るという目的に特化して、統計的にテスト問題の難易度を調整する項目反応理論(IRT)というテスト理論を使っている。受験者が正解すれば、事前に数多くの問題を用意した問題プールの中から、問題のレベルを上げて出題するコンピューター適応型テスト(CAT)を導入すれば、より正確な学力測定が可能になる。

また、限られた時間・問題数で、すべての領域から出題することはできないので、一部を重複させながら、難易度を調整した異なる領域のいくつかのパターンのテストに分かれて解答してもらう重複テスト分冊方式で、全体の学力を幅広い領域で効率的に測っている。こうしてIRTを使えば、年ごとに平均点が変化する理由から、出題した問題の難易度の差という要因を排除でき、過去の結果と学力を比較することも可能になる。日本の経年変化分析調査も重複テスト分冊方式を採用している。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事