教員600人調査、約2割が「退職・転職」希望の過酷 「保護者・PTA・地域」対応に大きなストレス

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また「上記で最も負担になっていること」の回答としていちばん多い回答も「ICT教育」の16.4%という結果になった。全国の公立小中学校の児童・生徒に1人1台端末を配布し、これまでにない授業形式を実施するのだから、定着するまでの苦労は容易に想像ができる。負担となる理由については「環境が不十分」「環境が脆弱でトラブルが頻繁に起こる。自費でケーブルなどを購入しないと機器が使えない」「校内のWi-Fiが脆弱で全校生徒が一斉に使えない」といった環境面の不備を指摘する意見が見られた。

さらに、「自分自身にスキルがない」「児童に教えるためのスキル習得に時間がかかる」など教員自身がICTスキルを得るためのハードルの高さを訴えている。

なお、2番目に回答が多かったのは「新学習指導要領」の15.3%で、負担の理由としては「取り組むべき内容の多さと複雑さ」「理論はわかるが実践が難しい」といった声が多く、「大幅な改訂に伴い作業負荷が膨大」とする意見も散見された。

本来、GIGAスクール構想の1人1台端末整備は、2023年までに実施をする予定だったが、コロナ禍の影響で急きょ大幅な前倒しを行い基本的には環境整備を20年度中に整えることとなった。教育現場では、今「新学習指導要領」とGIGAスクール構想に伴う「ICT教育」というドラスティックな変革が一気に押し寄せていることになる。

GIGAスクール構想では、ICT教育で自ら考える力を育てることはもちろんだが、校務の効率化を図ることも狙いの1つにある。スタート段階では新たな知識やICT機器の使い方を覚えなければならず、現場に負担が生じているが、校務の効率化、教員の働き方改革という側面から今後はいっそう重要視していく必要があるだろう。

また、教員の過重労働の原因は「新学習指導要領」「ICT教育」だけではない。これまでも指摘されてきたが、もともと教員の業務はあまりにも多い。調査では「授業以外でどのような業務に負荷を感じるか」といった質問も聞いている。

最も多く回答が寄せられたのは、教員の本業ともいえる「授業準備」だが、その次には「会議・打ち合わせ」「事務・報告書作成」が続く。それ以外にも「児童・生徒指導」「成績処理」「学校行事の準備」「学年・学級・学校経営」と並んで「保護者対応」なども同じような回答数となった。現場の業務は企業のように細分化されておらず、教員1人でさまざまな業務をこなしていかなければならない現実が反映された結果だろう。

最もストレスを感じるのは「保護者・PTA・地域」などへの対応

業務負荷が多い分、近年では教員のメンタルケアの問題も指摘されている。事実、文部科学省の調査結果では、19(令和元)年度には、精神疾患で休職した公立学校の教員数は過去最多の5478人に上っている。

今回の調査では「業務に関連したストレスや悩みはありますか?」の質問を行ったが、最も多かったのが「保護者・PTA・地域などへの対応」の38.5%。次いで「長時間勤務」の36.3%、「教員間の人間関係」も33.7%という結果だった。

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