「紙とデジタル」学びの違いは、経験の差の可能性 SNSのやりすぎは、学びにどんな影響があるか

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GIGAスクール元年を迎え、子どもたちの学習環境が大きく変わろうとしている。ただ、ICTの利活用がもたらすものは、メリットだけとは限らない。例えばSNSは教育に対してどのような功罪をもたらすのか。また、ICTによるコミュニケーションが不可欠になった今、子どもたちに求められる能力とはどのようなものなのか。言語教育の見地からICTをいかに教育に有効活用していくべきか、ペンシルべニア大学教授のバトラー後藤裕子氏に聞いた。

経験を積むことで、紙とデジタルの差はなくなるかもしれない

スマホ、タブレット、パソコンなど、世界中でデジタル機器利用の低年齢化が進んでいる。2000年以降に生まれ、デジタルテクノロジーとともに育ってきた「デジタル世代」はデジタル機器に慣れるのも早く、もはや赤ちゃんがタブレットで動画を見たり、小学生がスマホでゲームを楽しんだり、中高生にもなればSNSを利用するのが当たり前になった。

その一方で、日本は学校教育におけるICTの利活用が諸外国から大きく後れを取っているのは周知のとおりだ。OECD(経済協力開発機構)が行っているPISA(国際学習到達度調査)2018では、学校教育におけるICT利活用スコアは断トツの最下位。コロナ禍で前倒しされたGIGAスクール構想により、21年4月から公立の小中学校で「1人1台端末」の活用が始まっているが、これで他国との溝が少しでも埋まったと考えるのは性急だ。ペンシルべニア大学教授のバトラー後藤裕子氏は、こう話す。

バトラー後藤裕子(ばとらー・ごとう・ゆうこ)
米ペンシルべニア大学教育学大学院言語教育学部教授
専門は子どもの第二言語習得・言語教育・言語アセスメント。東京大学文学部卒業後、米スタンフォード大学教育学大学院博士号取得(Ph.D.教育心理学)。スタンフォード大学教育研究センターのリサーチフェローを経て現職。『デジタルで変わる子どもたちー学習・言語能力の現在と未来』(ちくま新書)、『英語学習は早いほど良いのか』(岩波新書)、『多言語社会の言語文化教育』(くろしお出版)、『日本の小学校英語を考える』(三省堂)など著書多数
(写真は本人提供)

「日本もいよいよGIGAスクール構想が発進して、状況がよくなってきていることは事実だと思います。しかし、米国や中国をはじめとする多くの国ではコロナ禍で学校閉鎖を余儀なくされた際、ICT教育を推進する好機だと捉え積極的に取り組みました。ユネスコが行った20年の調査では、先進諸国の95%がオンライン授業を実施し、学校再開後も73%が対面と組み合わせてオンライン授業をしていました。日本も本格的にデジタル教育への活用を進めていかないと、デジタル化が加速する社会に十分に対応できなくなってしまうでしょう」

しかも日本は、経済的な格差によりICTを使っている子と使っていない子のデジタル格差が大きいという。義務教育段階におけるICTの活用が進めば、その解消にもつながるはずだが、こうした待ったなしの状況にあっても、日本には学校教育のデジタル化に慎重さを求める意見が今も少なくない。

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