ファミマ、期限切れチキン問題で打撃 現地で何度も調査してきたが”裏切られた”

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「ファミマやマクドナルドの調査体制に不備はないだろう」。食品工場の衛生管理に詳しいフーズデザインの加藤光夫社長はこう話す。上海福喜食品は監査や視察がある際に資料改ざんなどを行っていたとされるが、「隠蔽を企業の衛生管理調査で見抜くのは容易ではない。調査は予告するのではなく、抜き打ちでの検査が必要だ」(加藤氏)。伊藤忠は今後抜き打ち検査を行う予定だったとしているが、上海福喜食品とは取引開始から日が浅く、まだ実施する前だった。

食品リスク管理などが専門の有路昌彦・近畿大学准教授も「先進国と比べると、どうしても中国ではコンプライアンスが現場の従業員や納入業者まで行き渡っているとは言い難い」と指摘する。ただ、専門家からすれば、こうした隠蔽は中国に限った問題ではないようだ。「国内の食品加工工場をある監査員が訪ねた際、地元産の穀物を使用していると言っていたにもかかわらず、工場の裏手に中国産穀物の段ボールがたくさん捨てられていたという話も聞く」(フーズデザインの加藤氏)。

「特効薬」はない

今回の事態を受けて「裏切られた」と話したファミマの中山社長(撮影:梅谷秀司)

有路准教授は「今回のようなリスクをどうしても低下させたければ、比較的コンプライアンス意識が浸透している先進国に委託先を移すか、IT技術を駆使してリアルタイムで原料管理ができるようにするほかない。その場合、消費者がある程度コスト負担をする必要が出てくる。安全・安心はタダでは手に入らない」と警鐘を鳴らす。有路准教授によると、コンピューターで委託先の工場の原料や使用状況について瞬時に把握できるようにしている企業も米国では実際にあるという。

 ファミマでは現在、状況把握を行っており「特効薬はないが、ひとつひとつの作業を積み重ねていくしかない」(中山社長)。今後は上海福喜食品との取り引きを打ち切るほか、ほかの海外の取引工場についても、日本企業の資本が入っているなど、よりコンプライアンス意識の高い企業に切りかえていく予定だという。

 コンビニ業界ではシェア争いが一段と激しくなっており、ファミマも2014年度は過去最大の国内1600出店を計画するなど攻めの姿勢を強めている。ただ、コンビニの実力を示す目安である1日あたりの既存店の売上高は、タバコの売上げ減少の影響をほかで補えず、セブン-イレブンとローソンを含めた上位3社の中で唯一マイナスに沈んでいる(2014年度第1四半期)。今回の事件がさらなる足かせになるおそれもあり、ファミマにとって踏ん張りどころとなりそうだ。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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