「超エリート集団」が手がける塾、今なぜ人気? 東大でも学べない「答えのない問題」解く力育む

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「東大」大学院を出ても、学べていないことがあった

そこにジョインした、もう1人の仲間がいる。渡慶次道俊さんだ。筑波大学附属駒場中学校・高等学校から東京大学工学部に入学。東京大学大学院工学系研究科を卒業後は、ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門に入社した。渡慶次さんは、社会に出た当時のことをこう振り返る。

デルタスタジオ 渡慶次道俊

「各国から集まった同僚と、ニューヨークでさまざまな研修を受けたのですが、日本人はペーパー試験では活躍できるものの、ディスカッションやプレゼンテーションになると、まったく活躍できない。海外の同期と比べると“答えのない問題”に対して、どう思考し、周りを巻き込んで解決していくか、という力が足りていなかったのですね。それには大きな戸惑いを感じました。僕自身は、日本の教育制度の中では比較的恵まれた教育を受けてきたと思います。ただ、僕が受けてきた日本の教育では、自分の頭で考えて発信する力はあまり重要視されてこなかった。実際に社会に出るとペーパー試験、いわゆる“答えのある問題”を解く力では解決できない問題のほうが多いにもかかわらず、それに対応する力が身に付いていない。教育の過程で学べなかった、その力こそ鍛える必要があるということに気づき、教育と社会のずれに大きな違和感を感じました」

渡慶次さんが感じた違和感は、日米両国の教育を体験した渡辺さんも直面している。中学2年生のとき、父親の海外赴任により米国の現地校に放り込まれ、「きみはどう思うの?」と聞かれるたびに、どう答えたらいいのかわからない戸惑いがあったという。日本人の基礎学力はOECD諸国の中でも非常に高いが、それだけではグローバルで活躍する力に直結しないのだ。

“答えのない問題”に対応する力をどのように育み、評価していくのか。それはまさに今、新学習指導要領における教育のあり方として、日本の教育現場が試行錯誤している課題でもある。

基礎学力の上にプラスしたい、才能という力

「日米両国の教育を受け、学生時代からグローバルで必要な力は何なのかをずっと考えてきました。日本人の基礎学力は、世界で見ても高いことは間違いありません。そのいわゆるペーパーテストで評価されている部分に、タレンティズムを組み込んでいく。そうすることで、グローバルで戦える力が身に付く。しかし、それは、いわゆる“ゆとり教育”につながるものでは決してありません」と渡辺さんはきっぱりと言う。

「教育のあり方や基準は違っても、どの国でも競争はとてつもなく激しいのが現実です。基礎学力が低くても才能だけ磨けばいい、というわけではもちろんありません。グローバルな世の中になっているからこそ、ビジネス界はもちろん、音楽や芸術分野、アスリートの世界であっても、競争はより熾烈になっています。その中で必要とされるためには、基礎学力に加えて、その子の特性や唯一無二の価値を引き出し伸ばしていく教育が必要です」

デルタスタジオでは、子どもたちを決して子ども扱いすることはない。つねに、率直なフィードバックを心がけている。例えば、子どもたちがCMを制作する授業では、「このCMが上手にできました」で終わらせることはない。「このCMを見たときに実際に商品を買いたいと思う?」「この表現は刺さったけど、この表現は刺さらなかったよ」など、現実に即した評価を行う。また、評価を付けたらそこで終わりではなく、なぜそれが評価されたのかを全員で考えたり、逆に評価されなかった理由をみんなで話し合う機会を持たせる。また、最終的にそのCMがいいかどうかを判断する人たちは誰なのか、CMのターゲットとなる消費者がどう感じるかがすべてである、という世の中の仕組みをきちんと教える。

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