電動キックスクーターで「移動手段」どう変わるか 公道が走れる14万円台「LOM」実際に乗ってみた

拡大
縮小
ハンドルを折りたたむと、大型のコインロッカーに収まるサイズになる「LOM」(筆者撮影)

ハンドルは折りたたみ式で、折りたたんだ状態であれば大型のコインロッカーにも入るサイズだ。BMXやスノースクートのような頑丈なフレームを使っているためか、重量はバッテリー込みで16.5kgと重め。リチウムイオン電池を採用したバッテリーのため飛行機への持ち込みはできないが、タイヤが隠れるバッグに入れれば電車を使った輪行が可能だ。

購入して以来、筆者はこの電動キックスクーターで近所を走っている。やや遠くのスーパーや精肉店、鮮魚屋への買い物が主な使い道だ。

立ったまま乗るため、スキーやスノーボードのように風を全身に受ける感覚が気持ちいい。自分の身長プラスアルファの高さとなるため視界が自転車以上に高く、目線を遮るものはほぼない。周囲の車からの視認性も高い。というか、まだ公道では見慣れないものなのだろう。興味の視線をひしひしと感じる。

幹線道路を走ってみたら…

アクセルはやや反応が鈍い。3つのパワーモードのうち、自動車道を走るのであれば最もパワフルなモードを使いたくなる。それでも50ccのホンダ・カブより加速は鈍いというのに、後輪駆動ゆえに、わずかでも上りの坂道だと一瞬ウイリーするほどのパワー。メーカーとしてはいま以上の過敏なセッティングは無理と判断したものと考えられる。

アクセルはレバー押し込み式。ストローク量が多く、アクセル全開となるまでかなり奥まで押し込まなくてはならない。メーカー曰く、安全性を考慮した設計となっているとのこと(筆者撮影)

前輪に荷重をかけたほうが安定するため、身体を前に寄せるようにして乗ると、ハンドル端に備わったミラーがほぼ見えない。なんとか斜め後ろが見える位置に調整しても、走行中の振動で固定ネジが緩んでくるのか、1kmも走らないうちにずれてしまう。

そして特筆したいのが、幹線道路での走行は罰ゲームかと思えるほどの怖さがあること。時速30km以上は出してはいけない原付一種枠の車両というのもあるのだが、制限速度ギリギリでの走行をすると路面のわずかな段差やヒビ、マンホールの上を走ったときの振動が大きい。後ろからくる車やトラックが勢いよく抜いていくので、風圧で思わずハンドルが取られそうになる。走行中、一瞬たりとも気は抜けず、神経がすり減った。少なくとも東京の環状七号線のような、片側2車線で歩道との間にある路肩も狭い幹線道路の走行はまったくもっておすすめできない。

また夜間の走行もストレスがたまる。テールランプの位置が低いために、自分の存在をアピールしにくい。反射素材が使われたウェアやバッグを使うなどして夜間の視認性を高め、自己防衛する必要がある。

ネガティブなことも記したが、あくまでチョイノリのためのモビリティであり、幹線道路を使ってほかの街まで行くといった使い方をしなければ、電動キックスクーターは扱いやすい乗り物だと感じた。ならばこそ期待したいのが「時速15km程度までの小型低速車」の車両区分新設だ。近所の移動に使うなら時速30kmもの最高速度は必要なく、ヘルメットいらずで乗れる小型低速車のメリットは大いにあるだろう。

武者 良太 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

むしゃ りょうた / Ryota Musha

1971年生まれのガジェットライター。90年代に出版社勤務の後、フリーライター/カメラマンとして独立。スマートフォン、モビリティ、AI、ITビジネスからフードテックなど、ハードウェアレビューから、ガジェット・テクノロジー市場を構成する周辺領域の取材・記事作成を担当する。元Kotaku Japan編集長。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT