どう乗り越える?「学校のICT活用」の高いカベ 突出を許さない公立、進学実績を重視の私立

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※1 フリップグリッド。先生が用意したボードに生徒がビデオを投稿してやり取りできるビデオ共有ウェブサービス

中村 公立学校時代は私も「突出したことをするな」と、よくクギを刺されたこともあり、世界はもっと進んでいるのに、教育も変わらなければいけない!という思いでいっぱいになり、いつしか限界を感じていました。教育用SNS(※2)を実験的に利用したところ、いつの間にか、アクセスを遮断されてしまったのでは?と思うこともありました。教育用SNSのメリットも、安全対策も知らないまま「子どもたちがSNSで犯罪に巻き込まれる事件があるので危ない」という断片的な情報を理由にして、ICTツールの利用をやめてしまうのはもったいないと思います。教育ICTについて先生側の理解度を高めることも必要ではないでしょうか。

※2 参加者を生徒や保護者に限定したり、生徒個人同士のやり取りを制限したりして、一般にない安全性を高めている。米国発のEdmodo(エドモド)、日本発のednity(エド二ティ)など多数のツールがある

岩居 ICTに詳しくない先生にいかに振り向いてもらうか、は最大の課題ですね。そのためには、少しでもICTに関心を持ってくれた先生に「こんなこともできるんですか。それがやりたかったのです」と言ってもらえるように、「アイコン」や「クリック」といった初歩から説明するような手厚いサポートが必要です。

大阪大学サイバーメディアセンター 教授 岩居弘樹
ドイツ語学習、複数言語を学ぶ「複言語学習」を実践研究する。教員向けにICT活用法も発信。オンライン授業法を解説するサイト「Zoom+α」を開設し、昨年3月から行っている「+α相談会」では、国内外の延べ2500人を超える教員からの相談に応じている。Apple Distinguished Educator(画像提供:iTeachers)

中村 現在の日本における教育はまだ、学校現場において、レクチャー型の授業が多く、子どもたちに学びのオーナーシップを渡したり、自ら学習を進めていける力を育てたりするような場面がそう多くないように感じています。受験勉強も大切かも知れませんが、子どもたちの創造性や学びに向かう主体性を育むことも大切です。今でも、そのバランスの取り方については、難しさを感じています。

小池 iTeachersのカンファレンスでも、「創造性をどのように評価するか?」は必ずと言っていいほど課題に挙がりますね。授業で創造性を育てることを目指すなら、評価方法も併せて変えないと、結局は入試実績の追求に向いてしまいます。

岩居 遠回りかもしれませんが、創造性を刺激すれば、学力も伸びます。すべての生徒の力を均等に伸ばすのは難しいかもしれませんが、飛び抜けた子どもを育てられる可能性にも目を向けるべきでしょう。

先生も子どもも「学びが楽しくなる感覚」を味わってほしい

――GIGAスクール構想で、ようやく公立の小中学校にもICT機器は配備されます。学校や、教育委員会をはじめ関係者の理解度を高めなければ、現場にICTを定着させるのは難しそうです。どのように解決したらよいのでしょうか。

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