超天才「台湾IT大臣」高校生の疑問にどう回答? オードリー・タン、頭の中身がすごかった

――私たちはこの世界に存在するあらゆる現象や問題の原因と構造、それからわれわれの行動が与えうる未来への影響を深く考えるために必要な深い教養を持っていないと思います。オードリーさんは幼少期から哲学書を読むなど広く深い教養に触れてこられましたが、それは現在の活動にどのように生かされていますか。(熊本高校)
正直に言えば、今の仕事に最も生かされていると思うのは、ほぼ毎晩、寝たい時に眠れて、8時間ほどで自然と目が覚めるまでしっかり眠ることができる能力です。
この能力は哲学書や教養など、ほかのどのようなことよりもずっと大切なものです。さらに、これはとても理にかなった能力です。というのも、人間は睡眠の過程において昼間の断片的な知識をまとめて自分の見解や創造力として確立します。十分な睡眠時間を確保できなければ、他人の言うことを鵜呑みにするばかりで自分で判断ができなくなってしまうのです。
したがって、昼間には急いで判断を下したり、「私は絶対こう思う」と偏った考え方をすることがなく、どのような選択をもできるようにしておく習慣を養うことが大事だと思います。夢の中では自分でも何が起こっているのかわからない状況に陥りますが、目覚めた時には前日の情報を受けて、自分の中での考えがきちんとまとまっているはずです。これこそが、私の今の仕事や活動の中で、とくに異なる部門の人や異なる意見を聞いて考えをまとめるために生かされています。
実は、どのような意見も聞き入れられる、どのような選択もできるようにするという能力も、社会に貢献する1つの方法なのです。特定の方法で社会を変えようとしなければならないわけではなく、ある一部の人たちが持っていたり、もともとは別の人たちに理解されなかった意見だとしても、間に誰かが立ってどちらの意見も取り入れられるようにすれば、互いにコミュニケーションができます。これも一種の社会貢献ですよね。

――私たち高校生はこれからの社会に改革を起こしていく立場にあります。自分自身、何か新しいことに挑戦しようとするたびに「失敗したらどうしよう」という不安が生じます。オードリーさんは誰も挑戦したことのない改革に取り組むとき、「失敗したらどうしよう」という不安にどのように対処していますか。(宮崎西高校)
もしすぐに完璧にできてしまえば、拍手されて誉められて、「この詩、この俳句は素晴らしいですね」と言われるだけで、それから先の交流にはつながらないと思います。
一方で、私の書いたものに誤字や文法上の問題があったり、語彙の使い方が正確ではなかったりすれば、新しい友達を作るきっかけになります。失敗ということは、勇気をもって間違いを認め、その間違いを指摘してくれた人の意見を聞き入れて、それをすぐさま自分の作品に取り入れることができさえすれば、失敗するプレッシャーで互いにぶつかることで創作やイノベーションの動力に変わるのです。したがって、私は公に失敗すること、なるべく早く失敗することが大事で、しかも失敗した時には周りの人に「ここで行き詰まった」ということを自ら示したのだ、別の方法を試してみようではないかといった流れに持っていけるようになればいいと思います。
――もし今生まれ変われるなら、もう一度オードリー・タンという人物になりたいと思いますか。また、どんな人物になってどんなことをしたいと思いますか。(宮崎西高校)
私が今過ごしている人生は、どんなに想像をしてみても自分に最も合っているものだと思います。だから、特に変わりたいと思うことはありません。ただ、もし何か変えたいことがあるとすれば、目覚めたらすぐにそれを実行に移します。
(写真はすべて「世界的なデジタル社会でどう生きていくか、高校生が何をすべきか」より)
前編「 オードリー・タン、日本の高校生と議論の裏側 」を読む
東洋経済オンライン「九州の高校生が台湾のデジタル大臣と白熱議論」で、デジタル社会に関する対話についてより深く読む
執筆:福田恵介 協力:安蒜美保制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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