超天才「台湾IT大臣」高校生の疑問にどう回答? オードリー・タン、頭の中身がすごかった

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当時、私が起業したテーマの1つは、自宅にある不用品をインターネットを介した物々交換やオークションといった方法で、必要としている人たちにどのように簡単に渡すことができるかというものでした。このような問題は、どの家庭にもありますよね。そのため遠くまで出向いたり、分析グラフを作ったりする必要もありません。こうした需要がありそうな、できるだけ多くの人たちから話を聞けばよいだけです。

つまり、試行錯誤を繰り返すことで、顧客からどのようなことが必要なのかを教えてもらえればよい、ともいえます。例えば、インスタントメッセージの機能や全文検索の機能などを必要とする顧客のニーズに合わせながら、誰にでも共通する問題として解決していけばよいのです。

多くの起業家が大事にしていることがあります。それは解決すべき核となる問題が自分の興味があるものであり、それを起業の主軸とする「ピボット戦略」を練ることです。これは、主軸に足を置きながら方向転換を繰り返す、すなわちさまざまな方法を試しながら利害関係のある人を見つけ出し、最適な解を見つけていく方法です。

――ネット上にあふれる情報の信頼性が問題となっています。例えば、そういった情報の出典や出所を明示する必要がよくありますが、情報化社会が進み、多くの情報がある中で、私たちが正確な情報というものをどう見分ければよいのでしょうか。(鶴丸高校)

この質問を考えるだけで、3日間の会議が成立しますね。簡単な言葉で答えるのはとても難しい問題です。

言えるとするなら、できる限り一時的な感情に影響を受けないようにするということです。ネット上にある、皆さんの元に流れてくる多くの情報は、一言のタイトルであろうとセンセーショナルな画像であろうと、多くの場合はある一定数の人たちの心を動かす情報です。

私は普段から、情報に接するときには一度深呼吸をして、なぜこの情報を見たときに共有したいと思ったのか、なぜ誰かから共有されてきたのかを考えてみます。これが大事ではないかと。いったんその情報を警戒してから、情報のソースを確認します。おそらく、皆さんも目にしたものを一方的な方法ではなく、さまざまな角度から確認する方法をお持ちだと思います。

正確な情報を検証する方法は、それぞれの分野に異なる論理があります。興味があれば、ウィキペディアのコミュニティーを参考にしてはいかがでしょうか。なぜなら、ウィキペディアには個人の意見というものはなく、すべて2~3カ所の異なるソースの資料を確認したうえで掲載されています。ネット上で情報をどのように確認するかを最も理解しているのはウィキペディアのコミュニティーの方たちだと思います。皆さんも自分で調べてみてください。

「日本の高校教育の現状をどう思いますか?」

――日本の普通科高校では、生徒は文系と理系に分けられます。一般的に、文系に分類される分野、文学や哲学といった教科はIT化が進むにつれて社会で軽視されるのではないかと危惧しています。こういった日本の教育の現状について、オードリーさんはどのように考えますか。また改善すべきことはありますか。(東筑高校)

この質問に私が答えるのはふさわしくないかもしれません。私は高校に通ったことがありませんからね。そのため、文系理系に分かれるという意味が私にはよくわかりません。

しかし、台湾の高校では学ぶべきものをコースではなく、18の学群で分けています。情報や工学、数学理科化学、医薬衛生、生命科学、生物資源、地球・環境、建築・デザイン、芸術、社会・心理、マスメディア、外国語、文学史学哲学、教育、法律政治、管理、ファイナンス、レクリエーション・スポーツ、および分類できないその他の学び、といったものです。

まるで大学で履修科目を選ぶように、一足先に高校で専門ごとに分けられるという仕組みです。とはいえ、1つの学群を選んだら残りの17は選べないというわけではありません。これは大学の選択科目のように、自分が学びたい学群を組み合わせることが可能です。

自分が解決したいと思う問題があれば、その問題に近い学群をあなたは志望することになります。高校の段階で「2つや3つの中から選べ」となるのではなく、多くの選択肢の中からいくつもの選択ができるような方法であり、一人ひとりの学生が自分独自のカリキュラムを作り出すことができる方法でもあります。これが、台湾の新学習指導要領の基本精神である「学生が主体となる」を実現する方法となっています。

――オードリーさんは幼少期から独学で学ばれたそうですが、デジタル化が進む中で、学校ではなくて独りで学ぶことを選択する人が増えるのではないかと思います。学校よりも独りで学ぶことを選ぶメリットとデメリットは、どのようなものがあるでしょうか。(大分上野丘高校)

私は中学校3年生の時でさえ学校には通っていません。しかし、中学校に行っていなかったからといって独りで勉強していたわけではありません。当時の私は、近くの大学で授業を聴講していたのです。つまり、必修科目がなくて、すべて選択科目となる環境に一足早く身を置いていたといえるでしょう。

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