ユーグレナ「会社のナンバー3に高校生」の思惑 ペットボトル全廃、忖度ない意見にあたふた

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
2019年から18歳以下限定の「CFO(最高未来責任者)」というポストを設置し、若い世代の意見を積極的に経営に取り入れている企業がある。藻の一種である「ユーグレナ」によって新しい循環型社会の構築を目指すユーグレナだ。「むしろ今は、中高生に大人が教えてもらったほうがいい」。そう話すユーグレナ代表取締役社長の出雲充氏に、変わりゆく日本の教育について、経営者の観点から意見を聞いた。

ユーグレナ社長で創業者である出雲充氏は東京大学在学中の1998年、訪れたバングラデシュで深刻な栄養失調の現実に衝撃を受け、世界の「栄養問題」を解決したいという問題意識を持った。もし子どもの頃読んだ漫画『ドラゴンボール』に出てくる、あらゆる栄養素が詰まった魔法の食べ物「仙豆」のようなものを作れれば、栄養問題を解決できるかもしれないと。

そんな思いから藻の一種で栄養豊富な「ユーグレナ」に着眼し、東大発ベンチャーとして2005年にユーグレナを創業、同年ユーグレナの世界初の食用屋外大量培養に成功した。12年に東証マザーズ、15年には東証1部に上場し大きな注目を浴びた。現在は食品や健康食品のほか、バイオ燃料などユーグレナを中心に幅広い事業を展開し成長を続けている。

高3の「CFO(最高未来責任者)」から教わったこと

――出雲さんは、文部科学省の教育再生実行アドバイザーを務められたご経験がありますが、現在の日本の教育についてどのような評価をされていますか。

私は教育の専門家ではありませんので、教育再生実行会議で申し上げてきたことは1つしかありません。それは今までの延長線上にない新産業を創出したり、イノベーションを起こしたりする場は今、大学しかないということです。なぜ大学以外から新たなイノベーションは生まれないのか。それは今の大企業の研究開発投資はサイクルが非常に短くなっており、1~2年で結果が出ないものを研究する余裕がなくなっているからです。

ユーグレナ 代表取締役社長 出雲 充

例えば、東レさんの開発した炭素繊維強化プラスチックなどは、研究がスタートしてから飛行機に採用されるなど実用化まで25年もかかっています。昔は大企業でもそんなことができたのですが、今はできない。大企業から新しいものを生み出しづらくなっているのです。

――その点、大学は違うということですね。

ええ。大学は長期間の研究ができる場所であり、イノベーションの種が詰まった宝庫でもあります。そんな大学が果たす機能は3つあります。それが教育と研究、そして社会実装です。ただ、これまで日本の大学では教育と研究は一生懸命やってきたものの、海外の大学と比べ、社会実装については後れを取ってきました。

しかし、現在は東大をはじめ、日本でも多くの大学からベンチャーが生まれるようになってきています。これから大学は、こうした流れをさらに加速させるべきです。その意味でも、研究開発を基に大学でベンチャーを起業させ、ビジネスとして成長させていく。そんな働き方やキャリアのつくり方があるんだということを、大学が小中高生にもっと伝えていくことが大切だと考えています。

――今、小中学生に1人1台の端末を整備する「GIGAスクール構想」などによって、教育のICT化が進んでいますが、キャリア開発などを大学と連携していくことも1つの方法かもしれませんね。

大学に行ったら、こんな研究ができて、会社もつくれる。そしてビジネスによって社会的な課題を解決することで、よりよい生活や社会を実現することができる――。せっかく1人1台タブレットを配るわけですから、大学の研究開発やキャリアの作り方を紹介するデジタルコンテンツを取り入れてもいいかもしれません。そうした取り組みを行った学校がこれからは長期的に生き残っていくと思っています。

小中高校生の時に先輩の大学院生やベンチャー起業家の話を聞いて、先輩たちの大学で学んでみようと思う。そして、その子が今度は起業家や研究者となり、また下級生の子どもたちにアドバイスしていく。実際に私も出身校の説明会に呼ばれて話をすると、子どもや保護者に非常に興味を持ってもらえます。これからは大学と接続できる学校と、できない学校とでは、どんどん差が開いていくように感じています。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事