ユーグレナ「会社のナンバー3に高校生」の思惑 ペットボトル全廃、忖度ない意見にあたふた

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――ユーグレナでは2019年から、18歳以下限定の「CFO(最高未来責任者)」というポストを設置しています。どのような理由から考えられたのですか。

1つは私たちの会社が、これから変わっていかなければならない、成長していかなければならないと考えたとき、5~10年後にお客様になる世代に選ばれ、成長を続けられる会社になるには何が必要なのか。それを未来のお客様である子どもたちからアドバイスをもらうということです。

例えば、地球環境の観点から、彼らは中身がどんなにいいものだったとしてもペットボトルを使った飲料は買わないし、それを作っている会社を信用できないと言います。イノベーションに今最も近いのは若い人たちです。将来的に会社が生き残るためには何をすればいいのか、そのヒントにしたいと考えています。

もう1つは、就業体験を通して、子どもたちに学ぶ楽しさや学習意欲を高めてほしいということです。若い時の就業体験が学習意欲を高めることは、多くの研究でも明らかになっています。鮮烈な就業体験は本人だけでなく、その周囲の友人たちにも影響を与えるでしょう。会社での体験を通して、学びの大切さを実感してほしいのです。

――CFOの設置によって実際にどのような効果がありましたか。

私個人も変わりましたし、会社も変わったと思います。例えば、初代CFOで高校3年生の小澤杏子さんからは次のように指摘されました。

「なぜ社長は、ペットボトルのお茶を何本も買ってくるんですか。ユーグレナはバイオ燃料を作って地球環境をよくする会社のはずですが、なぜプラスチックを捨てているのですか。マイボトルを持ってくればいいのではないですか」

これを聞いて、私はびっくりして恥ずかしくなりました。その日以来、実際にマイボトルを使うようになりました。彼女はとてもピュアで忖度(そんたく)なく、いい視点で物事に対して意見を言ってくれるのです。

実際に指摘された部分は、コスト的に見れば、現状のままのほうがいいのです。しかし、結果的にコスト高になっても、彼女の指摘どおりペットボトルから紙に替えることにしました。それと同様に、ユーグレナの培養施設における電気の供給元についても指摘を受けました。大人が思いつかないような視点です。こちらも指摘に従い、100%再生可能エネルギーに切り替えました。短期的にはコスト高になりましたが、これから10年後を考えれば、必ず後からやらざるをえない。そう考えれば、着手は早いほうがいい。会社も変わるきっかけをつかむことができました。

――CFOには、たくさんの応募があったと聞いていますが、その中から1人を選ぶとき、何が決め手となったのでしょうか。

第1期生を募集した昨年は500人を超える応募がありました。正直、驚きました。そのときの課題は、SDGsの17のゴールの中で、何に興味があり、ユーグレナでどんなことがしたいのかを論文で提出するというものでした。実際、論文を読んでもいいものばかりで、どれを選んでいいのか本当に迷いましたが、私たちが求めているのは「答え」ではなく「まったく新しい視点」です。そのうえで「度胸」も求めました。それは、もし頭の中でアイデアがあっても、役員会で発言してもらわなければならないからです。選ばれたメンバーたちはそれらが備わっていたのです。

大人たちとの交流の場をセッティングできる学校が伸びる

――そんな今の子どもたちに必要な教育とは何でしょうか。

今は小学生と中学生、高校生と大学生の違いがどこにあるのかわからない時代になっています。中学生が、スマホで検索をするなど、大学生と同じことができてしまうのです。もし大人と中学生が議論しても、大して内容は変わらないかもしれません。

一方で、私が子どもだった時代には、インターネットもスマホもありませんでした。ずっと漫画と本を読んでばかり。つまり、今のように違う世代との接続がなかなかできなかったし、中学生と大学生では差がありすぎたのです。しかし、今はネットによって、その差がなくなってきています。とくにオンライン教育が進んでいる学校であれば、やろうと思ったら、中学生で高校3年生までの勉強を終えることもできます。

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